研究課題/領域番号 |
21K09266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
松井 寛樹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (70612802)
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研究分担者 |
渡邉 研 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 運動器疾患研究部, 部長 (10342966)
酒井 義人 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (70378107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 腰部脊柱管狭窄症 / 黄色靱帯 / 黄色靭帯 / 靭帯肥厚 / 家族内発生 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の脊椎変性疾患の代表である腰部脊柱管狭窄症は、加齢変性に伴う脊柱管狭窄での神経障害を主とする病態である。病因の一つとして、腰椎黄色靱帯の加齢に伴う変性肥厚があり、この形成機序は未だ不明で予防法は存在しない。今までの研究で肥厚の過程で変性に伴う炎症の関与を指摘してきたが、一方で腰椎変性を伴わない靱帯肥厚の存在と家族内発生例が存在することに着目した。本研究では、加齢変性を伴わない黄色靱帯肥厚を臨床的に定義し、ゲノムワイド関連解析を行い靱帯肥厚における遺伝的因子の関与を評価し、家族内発生例の全ゲノム解析を行うことで、黄色靱帯肥厚の病態機序を解明し、本疾患の予防法や新たな治療法開発に繋がる。
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研究実績の概要 |
高齢者によくみられる腰部脊柱管狭窄症においては不可逆的な加齢変性によるところが大きく、脊柱管を手術的に拡大する以外の有効な根本的治療に乏しく、外科的手技が選択されることも少なくない。しかし本疾患の原因の一つである黄色靱帯の肥厚が加齢変性以外の要因で起こる可能性のあることを以前より我々は研究成果として指摘し、geneticな要素を制御することで新規治療および予防の可能性を考え本研究を立案した。この加齢変性に依存しない黄色靱帯肥厚を”Hereditary stenosis”とし、その成因となりうる病因、発生機序に関してゲノム解析を行うためには臨床的な定義づけが必要であると考えた。まずは1,000例を超える腰部脊柱管狭窄症例の黄色靱帯を画像的にMRIで評価し、力学的影響の受けにくいと考えられるL1/2高位の黄色靱帯肥厚を統計学的解析から数学的cut-off値を決定することを初年度の研究計画とした。黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio(FCR)の若年成人平均値(YAM)における年齢設定を決定するため、1,068名の画像を解析し、データ分布の正規性から50歳以下の若年者データを採用することとした。50歳以下のYAM+2 標準偏差(SD)をL1/2黄色靱帯肥厚のcut off値とし、初年度中に50歳以下で腰椎MRIを撮像しえた888例の解析を終え、目標1,000症例の解析結果を待って決定したcut-off値により、最終年度の臨床解析によるHereditary stenosisの病態と臨床的特徴、また基礎研究として発生機序解明のためのゲノム解析に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腰部脊柱管狭窄症における黄色靱帯肥厚において、加齢変性に依存しない遺伝的素因に起因して発生する可能性のある”Hereditary stenosis”を臨床的に定義するため、腰椎変性変化の影響を受けにくいL1/2高位の黄色靱帯面積(CSA)を、腰部脊柱管狭窄症患者1,068名で計測した。黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio (FCR)を計算し度数分布をみたところ、年齢50歳を境に増加していたため、L1/2 FCRの若年成人平均値(YAM)の設定年齢を50歳前後に設定する必要があると考えた。そこで年齢を40歳以下、50歳以下、60歳以下に区分してL1/2 FCR値がKolmogorov-Smirnov検定で正規分布する年齢が50歳以下であったことから、50歳以下のYAM+2 標準偏差(SD)をL1/2黄色靱帯肥厚のcut off値とすることと決定した。そこで50歳以下の腰椎MRIを後向きに収集し、現在までに888例(男性500例、女性388例;平均年齢38.0±9.6歳)の解析を終了した。L1/2 FCRの平均値は0.103、SD 0.06、Kolmogorov-Smirnov testにより正規性を認めている。男女差は認めなかった。現状のデータからはL1/2 FCRのカットオフ値が0.223と算出されている。また、バイオバンク登録した検体からgDNA提供を受け、Asian Screening Array (ASA, イルミナ社)を用いてタイピングを行い、各椎間における脊柱管の形態計測データ(602症例、各5椎間)を基にしたゲノムワイドのQTL解析をそれぞれ行ったところ、各椎間で一部オーバーラップしてp<5×10(-8)以下の相関が見られる複数の遺伝子座位を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
腰椎黄色靱帯肥厚において、加齢変性に依存しない遺伝的素因に起因して発生する可能性のある”Hereditary stenosis”を臨床的に定義するため、腰椎変性変化の影響を受けにくいL1/2高位の黄色靱帯の異常値cut-offを決定するため、50歳以下のL1/2高位の黄色靱帯面積を脊柱管面積で除したFlavum-canal ratio (FCR)データを1,000例収集する。L1/2 FCRの若年成人平均値(YAM)+2 標準偏差(SD)を求めた上で、cut-off値を決定する。この値に従い”Hereditary stenosis”を臨床的に定義することで、臨床およびゲノム解析が可能となる。臨床的にはHereditary stenosisを有する腰部脊柱管狭窄症患者の病態をまとめ特徴的な臨床所見、治療成績、予後を明らかにする。またHereditary stenosis例とnon-Hereditary stenosis例に分類の上、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行う。前年度までに同定した形態関連遺伝子座位の検討を含め、得られた解析データについてパスウェイ解析等を行い生物学的解釈について検討を進める。
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