研究課題
基盤研究(C)
超高齢社会の日本において要支援・要介護の原因の第1位は運動器障害である。これまでの調査で、成長期に発症した脊柱変形の患者は、成人期において椎間板変性や椎体終板の変性であるModic変性を発症する可能性が高いことを明らかにしており、脊柱変形が老後の健康寿命に与える影響は大きいと予測している。早期に脊柱変形を治療することが重要となるが、脊柱変形から椎間板変性やModic変性が発症する機序は明らかではなく、現時点で有効な予防法はない。脊柱変形において椎間板変性・Modic変性が起こるメカニズムを解明することを目的に研究をおこなう。
脊柱変形において椎間板変性・Modic変性が起こるメカニズムを解明するため、脊柱変形にて手術加療した患者の調査を行なった。1968年から1988年に思春期特発性側弯症の診断を受け手術を受けた患者に対して連絡をとり調査依頼を行ない、腰椎MRI、全脊椎X線、患者報告アウトカム尺度による評価を行なった。この患者らは、脊柱矯正固定手術後に34年から51年が経過している。手術時年齢が11歳から19歳であり、調査時の年齢は47歳から67歳となっている。脊柱変形の中高年期の変化を捉えることが可能であった。脊椎の矢状面配列異常、冠状面配列異常がどのように椎間板変性・Modic変性の発生に関与しているのか、その特徴を解析を施行した。椎間板変性の有病率は7年前の66.7%から76.9%に増加していた。Modic変化の有病率は7年前は47.6%であったのに対して最新調査では66.7%であり、統計学的に有意差はないが増加していた。X線の矢状面アライメントのパラメータであるSVA、PI-LL、PTは時間の経過とともに悪化していた。患者報告アウトカム尺度では、SRS-22のpainとmental health、RDQ、ODIも有意に悪化していた。下位固定椎体がL4以下とL3以上の患者を比較すると、L4以下群ではdisc scoreが有意に高く、椎間板変性の有病率は100%であった。L4以下群ではLLが小さく、SRS-22のsatisfactionが低かった。椎間板変性と関連する要因は、L4以下での下位固定椎体、小さなLL、大きなTLK、SVA、PI-LL、PTであった。本研究の最終的な成果は、脊柱変形に対する脊椎固定術後の長期的な椎間板変性の予防のためには、下位固定椎体をL3以上に保ち、良好な矢状面アライメントを実現し、腰椎前弯を維持することが重要であることが明らかになったことである。
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