研究課題
基盤研究(C)
超高齢社会の日本において要支援・要介護の原因の第1位は運動器障害である。これまでの調査で、成長期に発症した脊柱変形の患者は、成人期において椎間板変性や椎体終板の変性であるModic変性を発症する可能性が高いことを明らかにしており、脊柱変形が老後の健康寿命に与える影響は大きいと予測している。早期に脊柱変形を治療することが重要となるが、脊柱変形から椎間板変性やModic変性が発症する機序は明らかではなく、現時点で有効な予防法はない。脊柱変形において椎間板変性・Modic変性が起こるメカニズムを解明することを目的に研究をおこなう。
脊柱変形において椎間板変性・Modic変性が起こるメカニズムを解明するため、脊柱変形にて手術加療した患者の調査を行なっている。1968年から1988年に思春期特発性側弯症の診断を受け手術を受けた患者に対して連絡をとり調査依頼を行なった。この患者らは、脊柱矯正固定手術後に33年から51年が経過している。手術時年齢が11歳から19歳であり、調査時の年齢は47歳から70歳となっている。脊柱変形の中高年期の変化を捉えることが可能である。これら患者にX線検査、 MRI、CT検査を行なっている。X線検査、MRI、CT等の画像検査と患者自己評価式スケールを用いて、脊柱変形が患者の腰痛・社会生活障害におよぼす影響を調査している。脊椎の矢状面配列異常、冠状面配列異常がどのように椎間板変性・Modic変性の発生に関与しているのか、その特徴を解析している。 また、脊柱変形に関する国内外の学会にて椎間板変性・Modic変性の発生機序、特徴、危険因子に関する情報収集を行なった。健康関連QOLに関する解析では、術後40年以上経過し中高年期を迎えた思春期特発性側弯症患者のQOLは、この13年間維持されていた。しかし腰痛に関するスコアであるODIについては8年前と比べて悪化していた。ODIが10%以上悪化した群とそれ以外の群との比較では、手術時年齢、調査時年齢、術後経過観察期間、body mass index、固定椎体数に有意差はなかったが、ODIが10%以上悪化した群で可動椎間板が少なかった。COVID-19パンデミックは、脊椎固定術を受け中高年となった側弯症患者の 31.4% に何らかの影響を与えていた。 パンデミックの影響は、ODI が悪化しているグループと ODI が安定しているグループの間で有意差はなかった。 パンデミックは、手術後少なくとも33年経過した脊柱変形患者への影響はあまりなかった。
3: やや遅れている
COVID-19感染症の流行下での調査であったため、患者検査の遅れが生じた。
脊柱変形の治療を行い長期経過した患者のX線検査、骨密度、MRI、CTについての調査を完遂させる。これらの検査と健康関連QOLの関連を解析する。新鮮凍結屍体を用いた脊椎の有限要素法の検証を行い、CTより得た三次元データを使用し、有限要素法にて構造解析する。患者らのデータを用いた有限要素解析により、椎間板変性・Modic変性を反映した椎間板と終板の要素を追加した新しいモデルを構築し、変性変化を予防する新しい手術方法の検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
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