研究課題/領域番号 |
21K09410
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
宮崎 淳 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (10550246)
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研究分担者 |
西山 博之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20324642)
神鳥 周也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50707825)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | BCG / Trehalose dimycolate / 尿路上皮癌 / 癌免疫 / ビーシージー / 脂質免疫 / リポソーム / 抗酸菌 / 細胞壁成分 / TDM |
研究開始時の研究の概要 |
免疫チェックポイント阻害療法(ICI)を始めとする癌免疫療法の大部分は、MHC分子によって提示されるペプチド抗原を標的とし、機序の解明も進んでいる。一方でICIと同じく、膀胱癌に対するMycoabcterium bovis bacillus Calmette-Guerin(BCG)膀胱内注入療法の免疫学的機序の詳細については解明されていない。我々はこれまでBCGの細胞壁成分である糖脂質trehalose-6 6’-dimycolate(TDM)を分離精製・リポソーム化し、抗腫瘍効果を検証してきた。本研究では、人工脂質から完全合成した人工TDMを用いた脂質癌免疫のメカニズムを解明することである。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害療法(ICI)を始めとする既存の癌免疫療法の大部分はMHC分子によって提示されるペプチド抗原を標的とし、その分子生物学的機序の解明も進んでいる。一方でICIと同じく、最も臨床的有用性の確立した膀胱癌に対するMycoabcterium bovis bacillus Calmette-Guerin(BCG)膀胱内注入(膀注)療法の免疫学的機序については、ほとんど解明されていない。我々は、BCG細胞壁成分の1つである、ミコール酸(MA)をリポソーム化することで、MAに抗腫瘍効果があることを発見し、この基盤技術に対して特許申請中であったが(【発明名称】リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キット【出願番号】特願2019-504598)、権利化が認可された。さらに、リポソームに変わる製剤として、自己組織化という新規技術を用いて、治療応用可能な純度100%のTDM製剤の開発も同時に目標としている。また、我々は、MA2分子とトレハロースから構成される、TDM(trehalose-6 6’-dimycolate)リポソームがBCG生菌に匹敵する強力な抗腫瘍効果を持つことを見いだしている(Cancer Immunol Immunother. 2021)。以上から我々の研究グループの目標は、①BCGの抗腫瘍免疫をもたらす重要な分子を探索②ターゲット分子を用いた非生菌製剤の開発である。これら研究目標以外にも、TDMリポソームが膀胱発がんを抑制するか、さらにTDMリポソーム製剤投与が、膀胱内にCD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、NK細胞の浸潤を増加させるのかなど、どのようなメカニズムがTDMリポソームによって、誘導されているのかを検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然物からTDM、MAを抽出、人工的にリポソーム化する技術は当研究室では確立してきた。今回我々の開発した、リポソーム方法の特許が権利化され、創薬に向けて一歩進んだと考えられる。さらに、共同研究者の産業総合研究所の有村隆志先生から、自己組織化による100%純度の親水性TDMを供与頂けるようになり、あたらしい形のTDM開発を試みることができるようになった。また英国Bangor大学のBaird教授とも人工合成TDMについても継続して、共同研究しており、人工合成TDMの抗腫瘍効果についての特許できるよう調整している。これら種々のTDMの抗腫瘍効果について検証することで、よりTDMを製剤にすることが可能になると思われる。また、本研究では各種syngeneic マウス腫瘍モデルを使用し抗腫瘍効果を検討するが、これらのモデル系は当教室ですでに充分確立している。特に、N-butyl-N- (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)発癌ではBBNを一定期間食餌させることで膀胱発癌を誘発するモデルが確立されており、食餌12週目以降より上皮内癌ができるこをを確認している。このBBN発癌マウスモデルに、TDMリポソームを腹腔内投与することで、抗腫瘍効果が得られそうであるという知見をすでに得ている。このマウスモデルにおいて、膀胱組織からRNAを抽出し、RNAシークエンス解析を行い、抗腫瘍効果が発揮されるメカニズムの解明への手がかりとなるよう現在解析中である。Preliminaryな結果ではあるが、TDMリポソーム製剤投与は膀胱内にCD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、NK細胞の浸潤を増加させることが判明している。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍とリポソーム製剤を混和あるいは腫瘍接種部位に製剤を注射し抗腫瘍効果を検証してきた。しかし実臨床において腫瘍局所に製剤を投与することができる場面は限定的であり、実臨床への応用は難しい。現在、BCGコンノート株から抽出したTDMリポソームでは腹腔内投与モデルでも抗腫瘍効果が期待できる結果が得られている。これは、TDMにより全身的な免疫誘導が起こることを示唆できる所見であり、実臨床への応用も可能と考えられる。すなわち、実臨床においては、局所投与だけではなく、静脈注射なども検討できる可能性がある。我々の実験系は、BBNにより膀胱発癌させたorthotopicのモデルで人工合成TDMリポソーム製剤を腹腔内投与し、膀胱の発癌抑制効果が認められている。摘出した膀胱からRNAシークエンス解析を施行しており、B細胞の分化や活性化シグナルのほか、自然免疫と獲得免疫の相互作用などが認められている。BBN膀胱発癌モデルの免疫環境をコントロールリポソームとTDMリポソームで比較したところ、膀胱内にCD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、NK細胞の浸潤を増加させることが判明している。これら免疫系の細胞のうち、我々は、NK細胞に注目し、さらなるNK細胞分画の検証を今後行っていく。
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