研究課題/領域番号 |
21K09467
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90402370)
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研究分担者 |
小田 智昭 浜松医科大学, 医学部附属病院, 医員 (00884743)
磯村 直美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80647595)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 羊水塞栓症 / 臓器 / アナフィラクトイド反応 / 特異的反応 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、本邦の妊産婦死亡の原因として羊水塞栓症が多い疾患とされているが、その病態メカニズムが未だ解明されておらず、突然の発症と急激な全身状態の悪化に対して確立した治療法がない。羊水・胎児成分の母体循環の機械的塞栓とアナフィラクトイド反応が関与することが示唆されているが、実際の症状は様々であり、現在行われている羊水塞栓症登録事業では主に心肺機能不全と危機的産科出血の検討は行っているが、本症が誘因になっていると考えられる意識障害、DIC、胎児機能不全の発症機序を説明することは未だ困難な状況にある。本研究は羊水塞栓症の全身の主要臓器の変化および特異的反応の有無を明らかにし新しい治療戦略の探求を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は2021年度に引き続いて、羊水塞栓症症例の主要な全身各臓器のトリプターゼ染色の染色面積について検討を行った。肝臓、腎臓、副腎皮質、心筋、肺、子宮の組織を用いて比較検討し、心筋、肺、子宮筋において肥満細胞周囲のトリプターゼ染色範囲の有意な増加を認めた。羊水塞栓症においては、心筋、肺、子宮筋において特異的に肥満細胞が脱顆粒していることを示唆する結果を得た。本成果については現在、論文化に向けてまとめている。 2022年度はさらに、羊水塞栓症症例のの子宮組織に着目し、発症リスク因子を検索するため、遺伝子バリアントの同定に着手した。ホルマリン固定パラフィン包埋切片からゲノムDNAを抽出後、全ゲノムシークエンスを行い、コントロールとの比較からデータを解析し、現在、ホモバリアント(特定の遺伝子機能変化が発症原因と想定)、ヘテロバリアント(頻度が多いバリアントが発症に関連するマーカーになると想定)、ウルトラレアバリアント(非常に稀なバリアントがde novo発生すると想定)の3つの観点から遺伝子バリアントを探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
羊水塞栓症は心肺虚脱と異常出血に関連した症状を呈することが多いことが知られていたが、2022年度の研究によって臓器レベルの障害が心筋、肺、子宮筋に特異的に発生していることが明らかになった。現在、主に子宮組織において、発症リスク因子である可能性がある遺伝子バリアントの同定を行なっており、計60個の遺伝子がその候補として挙がってきている。羊水塞栓症の臓器特異的な病態形成のプロセスを検討する上で方向性を示す妥当な進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は羊水塞栓症の死亡症例の主要臓器における特異的な所見として、肝臓、腎臓、副腎に対し、心筋、肺、子宮筋において有意なトリプターゼ陽性所見を認めた。また、子宮組織を用いた実験で羊水塞栓症発症に関連する可能性のある60個のホモバリアント遺伝子候補を同定した。今後、追加解析を行なった後、肥満細胞株を用いて各遺伝子バリアントの機能や羊水塞栓症との関連を検討する予定である。
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