研究課題/領域番号 |
21K09476
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井原 義人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70263241)
|
研究分担者 |
井内 陽子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20316087)
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
南方 志帆 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (90508574)
眞鍋 史乃 星薬科大学, 薬学部, 教授 (60300901)
岩橋 尚幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50750907)
山本 円 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (70596973)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | C-マンノシル化 / 卵巣がん / 糖タンパク質 / 糖鎖修飾 / 腫瘍マーカー |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣がんは致死率が高く早期の発見と診断が望まれるが、現時点でがん特異的血液診断マーカーは存在しない。近年我々は、糖修飾分子であるC-マンノシル化トリプトファン(C-Man-Trp)がマウス卵巣や子宮組織で極めて高レベル存在し、卵巣悪性腫瘍患者において、その血中濃度が有意に上昇することを見出した。さらに、マウス卵巣がんの腹膜播種におけるC-Man-Trp濃度の血中や腹水中での上昇を発見した。本研究では、卵巣がんにおけるタンパク質C-Man化とC-Man-Trpの病態制御機構の解析によりその病態的意義を明らかにし、ヒト検体の解析を通じて血中C-Man-Trpの診断学的意義の検証を行う。
|
研究実績の概要 |
C-マンノシル化(C-Man化)とはタンパク質中のトリプトファン(Trp)に付加する糖修飾であり、修飾タンパク質の機能制御や、代謝物と考えられるC-Man-Trpの生体機能が注目されている。我々は、卵巣がん患者におけるC-Man-Trp血中濃度の上昇を報告したが、その病態生理的意義は未解明である。本研究では、「マウス卵巣がん腹膜播種モデル」を用いて、タンパク質C-Man化の誘導に関連する遺伝子の同定と病態生理機構の解析を行い、「卵巣がん患者検体のC-Man-Trp測定」を通じて臨床データとの関連を解析することで、タンパク質C-Man化の卵巣がんにおける異常代謝と病態生理機能の解明を目指す。本年は、マウス卵巣がんOV2944-HM-1(HM-1)細胞の腹膜播種過程で、C-Man-Trpの産生増加に寄与するマウス体内の細胞解析を進めた。昨年までの解析で、C-Man-Trpレベルは通常培養条件のHM-1細胞に比べ、腹水中の腫瘍塊組織や浮遊細胞で有意に増加していることがわかった。さらに解析を行ったところ、腹水中の浮遊細胞の構成としては、骨髄系細胞が主で、マクロファージ、リンパ球、HM-1細胞の比率はいずれも低いことがわかった。この結果から、C-Man-Trpの産生増加には、卵巣がん細胞のみならず骨髄系を中心とした免疫系細胞の関与することが示唆された。さらに、腹膜播種に伴う腹膜腫瘍組織や腹腔内浮遊細胞における遺伝子発現の変化についてmRNA-Seq解析を行い、腹膜腫瘍組織や腹腔内浮遊細胞において、mRNAレベルがコントロールに比べて有意に増加したC-Man化タンパク質の候補遺伝子として、トロンボスポンジンを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス卵巣がんHM-1細胞を用いたマウス腹膜播種モデルによる準備研究において、がん細胞の腹膜播種後、血清C-Man-Trpレベルの有意な上昇を認めた。そこで、卵巣がんの腹膜播種過程でC-Man-Trpの産生増加に寄与するマウス体内の細胞の同定を試みた。HM-1細胞、あるいはリン酸緩衝生理食塩水をマウス腹腔に接種し、3-10日後に、血清、腹水、腫瘍塊組織、腹膜腫瘍組織、腹腔内浮遊細胞を回収した。1)腹水中から得られた浮遊細胞をセルソーターで解析したところ、骨髄系細胞が主で、マクロファージ、リンパ球、HM-1細胞の比率はいずれも低いことがわかった。腹水中の細胞では、C-Man-Trpの産生増加には、HM-1細胞のみならず骨髄系を中心とした免疫系細胞の関与することが示唆された。2)腹膜播種に伴う腹膜腫瘍組織や腹腔内浮遊細胞における遺伝子発現の変化をmRNA-Seq解析で検討した。腹膜腫瘍組織や腹腔内浮遊細胞においてmRNAレベルがコントロールに比べて有意に増加した遺伝子から、分泌タンパク質をコードする169遺伝子を選択し、NetCGlyc-1.0解析を用いて、C-Man化タンパク質をコードする複数の候補遺伝子をさらに絞り込んだところ、トロンボスポンジン遺伝子を同定した。
|
今後の研究の推進方策 |
マウス卵巣がんHM-1細胞のマウス腹腔内ヘの移植に伴い、腹膜腫瘍組織や腹腔内浮遊細胞において、C-Man-Trpの生成が有意に増加していた。一方、HM-1細胞移植後の腹腔内浮遊細胞では、骨髄系細胞が主で、マクロファージやリンパ球、HM-1細胞の比率はいずれも低いことがわかった。卵巣がん腹膜播種条件下において、C-Man-Trp産生がどのような細胞で誘導されるのかを明らかにし、その分子機構の解析を進めていく。 また、マウス卵巣がん細胞の腹膜播種に伴い、腹腔内浮遊細胞において発現レベルが増加したC-Man化糖修飾を受ける候補分子として、トロンボスポンジンが同定された。トロンボスポンジンの発現と遊離C-Man-Trp産生機構の解析を行い、C-Man-Trp産生の制御機構の解明を試みる。 さらに、ヒト卵巣がん患者検体および診療情報を用いた研究では、C-Man-Trpと病型、進行度、悪性度、治療に関する解析を進め、C-Man-Trpとがん病態因子との関連を明らかにする。
|