研究課題/領域番号 |
21K09667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村田 美幸 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (50423752)
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研究分担者 |
野田 航介 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (90296666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 糖尿病網膜症 / アクロレイン / MCP-1 / 網膜グリア細胞 / 炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病網膜症は主要な失明原因の一つであり、その病態の解明は眼科学における重要な課題である。糖尿病網膜症おいて網膜グリア細胞は炎症関連分子を分泌し病態形成に関与する。我々は過去に、糖尿病網膜症患者の眼組織において網膜グリア細胞に不飽和アルデヒドの一種であるアクロレインが結合した蛋白が蓄積していることを報告した。アクロレインは反応性が高く、様々な蛋白と結合することでその機能異常を惹起する。我々は最近、アクロレインが培養網膜グリア細胞において、炎症を促進させる分子である単球走化性因子の発現を誘導することを見出した。本研究では、糖尿病網膜症におけるアクロレインの炎症誘導機構について検討をおこなう。
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研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は重篤な視機能障害をきたすため、その病態の解明は眼科学における重要な課題である。我々は過去に、増殖糖尿病網膜症患者の線維血管組織において網膜グリア細胞に不飽和アルデヒドの一種であるアクロレインが結合した蛋白が蓄積していることを報告した。アクロ インは反応性が高く、様々な蛋白と結合することでその機能異常を惹起するため、神経変性疾患や悪性腫瘍など多様な疾患病態で注目されている分子である。本研究では、糖尿病網膜症におけるアクロレインの炎症誘導機構について検討をおこなう。 前年度までに、アクロレインがラット培養網膜グリア細胞株TR-MUL5において、単球走化性因子(monocyte chemoattractant protein-1、MCP-1)を含む複数の炎症関連分子の発現を誘導することが明らかになっている。また、トランスウェルの下方にTR-MUL5を播種し、アクロレインを添加して24時間後に上層のウェルにマクロファージ細胞株を播種した実験により、アクロレイン刺激によってTR-MUL5からの分泌が増加したMCP-1が、マクロファージの遊走を促進させることも判明している。令和4年度は臨床検体を用いた解析を行い、糖尿病網膜症患者の硝子体中でアクロレイン結合蛋白とMCP-1が共に有意に増加し、両者が正の相関を示すことを明らかにした。また、TR-MUL5細胞を用いたin vitro実験によりアクロレインがhigh mobility group box 1 (HMGB1)の核外移行を促進するというデータも得られており、アクロレインによるMCP-1の発現誘導との関連について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究実施計画のうち、培養網膜細胞を用いた in vitro 実験において「アクロレイン添加で変動する炎症関連分子のスクリーニング」「アクロレインに誘導される炎症関連分子によってマクロファージなどの走化性が変化するかのトランスウェルアッセイでの検討」、臨床検体を用いた解析において「糖尿病網膜症患者の眼内の炎症関連分子とアクロレインの相関の検討」が終了し、学術的意義のある結果を得ていることから、おおむね順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、培養網膜グリア細胞においてアクロレインによる炎症関連分子誘導の分子メカニズムの解明を目的として、real-time PCR、ウエスタンブロッティングによって、アクロレインに誘導される炎症関連分子の上流の転写制御因子の発現、活性変化の解析を引き続き進める。アクロレインにより局在が変化する分子としてHMGB1がすでに同定されており、同分子に対する阻害剤を添加し、アクロレインによる炎症関連分子の発現誘導が抑制されるかを検討する。
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