研究課題/領域番号 |
21K09731
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
奥村 直毅 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (10581499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 角膜内皮 / フックス角膜内皮ジストロフィ / MALDI / 角膜 / MALDI-TOF MS |
研究開始時の研究の概要 |
過剰なタンパク質の合成はフックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs endothelial corneal dystrophy; FECD)の病態の中心とも言える一方で、「過剰なタンパク質」とは、①どのようなものであり、②角膜内皮組織のどの部位に、③病期のどの時期に産生されるのか、④遺伝的背景と関係するのかについてはほぼ不明である。そこで本研究では、FECD患者組織および正常ドナー角膜を用いてショットガン解析によるタンパク質の網羅的発現解析およびMALDI-TOF MSによる質量分析を行いこれらの不明点を明らかにする。
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研究実績の概要 |
フックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs endothelial corneal dystrophy; FECD)は、角膜の透明性維持に不可欠である角膜内皮細胞が進行性に障害される疾患である。Guttaeと呼ばれる細胞外マトリックスを主たる構成成分とする疣状の突起が角膜内皮と基底膜の間に形成され、光の散乱を生じることで視機能が障害される。さらに進行すると角膜内皮細胞の障害が進むことで角膜浮腫による視力障害が生じる。進行すると角膜移植によってしか治療することができず、実際に世界の角膜移植の原因の約40%を占める。現在のところ薬物療法は存在せず、角膜移植によらない治療法の開発は当該分野の大きな解決課題である。 これまでguttaeと角膜内皮障害という2つの病的なイベントがなぜFECDでは同時に認められるのかについて不明であった。申請者らはFECDの病態解明および治療薬の開発を進める中で、TGF-βの活性化により角膜内皮細胞が細胞外マトリックスを過剰産生することが、guttae形成に加えて小胞体ストレスを誘導して細胞死を生じさせることを報告してきた。 過剰なタンパク質の合成はFECDの病態の中心とも言える一方で、「過剰なタンパク質」とは、①どのようなものであり、②角膜内皮組織のどの部位に、③病期のどの時期に産生されるのか、④遺伝的背景と関係するのかについてはほぼ不明である。そこで本研究では、FECD患者組織および正常ドナー角膜を用いてショットガン解析によるタンパク質の網羅的発現解析およびMALDI-TOF MSによる質量分析を行いこれらの不明点を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、FECD患者角膜内皮組織において発現するタンパク質のショットガン分析を行った。Thuret教授(University of Saint-Etienne、フランス)により角膜移植を施行されたFECD患者より同意を得た上で、角膜内皮組織の提供を受けて日本でショットガン分析を行い、解析を進めた。これらの解析は池川教授(同志社大学)との共同研究としてMALDI(rapifleX MALDI Tissuetyper、Bruker社)により質量分析を行った。始めた。さらに、ショットガン解析およびRNAseqのデータによるシグナル解析を行った。これまでに、FECD患者由来の角膜内皮では正常ドナー由来の角膜内皮と比較して32種類のタンパク質が過剰に発現していることを確認した。さらに、FECD患者およびドナー角膜から採取した角膜内皮を基底膜のまま切片などを作成することなくMALDIによりイメージングできることが明らかとなった。生体におけるオリエンテーションをほぼ維持した状態でイメージングできることは、ショットガン解析による網羅的なタンパク質解析と合わせて解析することでFECD患者の角膜内皮におけるタンパク質、とくに異常なタンパク質の発現を量のみならず空間的な配置とともに明らかにできる。本研究はFECD患者においてguttaeが角膜中央から発生し、重症化にともない繊維組織に覆われ、さらに周辺部に広がっていくという広く知られた進展様式のメカニズム解明に寄与すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
① FECD患者角膜内皮組織において発現するタンパク質のショットガン分析による網羅的解明については、Thuret教授より提供されたFECD患者由来の角膜内皮組織について、より多くのサンプルにてショットガン分析を行う。FECD患者は病期毎に各5サンプル、正常ドナー角膜をコントロールとして5サンプルまでデータを取得する。 ② FECD患者角膜内皮組織のMALDI-TOF MSによる質量分析については、FECD患者の角膜内皮組織を池川教授(同志社大学)との共同研究としてMALDI(rapifleX MALDI Tissuetyper、Bruker社)により質量分析を行う。①でサンプル数を増やした後に、得られたタンパク質網羅的発現解析結果を用いてアノテーションすることで、タンパク質の角膜内皮組織における発現の局在を明らかにする。 ③ ショットガン解析およびRNAseqのデータによるシグナル解析については、細胞外マトリックスに関するシグナルについて重点的に解析し、解析結果についてFECD疾患モデル細胞を用いてウェットな実験を行い細胞外マトリックスの過剰産生に関わるシグナルを明らかにする。
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