研究課題/領域番号 |
21K09846
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 良喜 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (10609085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 腸ー口腔相関 / 免疫系バイオマーカー / 抗菌ペプチド / βディフェンシン / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
生体の入口である口腔は外来抗原や病原性微生物の侵入を防ぐだけでなく、独自の常在菌叢に対応するユニークな免疫系ネットワークシステムを構築している。免疫系システムの活性化は腸管免疫システムを起点として全身に波及し、生体恒常性の維持・亢進の中心的役割を担うことで生体リズムを安定させている。しかしながら、腸管から口腔への波及経路は不明である。本研究は腸管を起点とした口腔への免疫波及効果について免疫系システムを中心としたシグナル分子の探索を行う。
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研究実績の概要 |
生体の入り口(消化器系と呼吸器系)である口腔は、外来抗原や病原性微生物の侵入を防ぐ重要な場所である。口腔は他と同様に粘膜上皮に覆われているが,軟組織(歯肉・舌・頬)と硬組織(歯)から混在し,さらに顎骨に裏打ちされるユニーク性を有している。また、常在菌叢を有しているが,独自の解剖学的特徴から,酸素の豊富な好気的部位と少ない嫌気的部位が混在することで多様な常在菌叢が存在する。 近年,免疫システムは生体の感染防御作用だけでなく,内分泌システムや自律神経システムと協調して生体リズムを保つ生体恒常性の維持・亢進において中心的な役割を担うことが報告されている。腸管は栄養素の消化・吸収の場だけでなく,免疫細胞の約6割が存在し,独自に構成された固有の細菌叢により免疫細胞を活性化させる場として注目されている。腸管粘膜免疫システムは広く,多臓器間ネットワークを構築することで全身免疫システムを賦活化させることから,これらを解明するために様々な取り組みがなされている。これまでに,腸―脳相関など腸管神経系と中枢神経系が連携することが報告されているが,口腔に対する免疫波及機序は依然として不明な点が多い。 本研究では腸管を基点とした口腔への免疫波及機序の解明を目的に免疫系シグナル分子を中心に探索を行う。これまでに、乳酸菌の胃内投与により唾液中の抗菌性ペプチド(βディフェンシン3; bD3)の産生誘導することで、口腔内疾患の発症抑制・軽減をすることを報告している。しかしながら、腸ー口腔を相関する誘導系については不明である。そこで、我々は唾液bD3の産生誘導機序について免疫システムのうち、自然免疫システムに着目して①液性因子、②免疫細胞の胴体を中心に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管を基点とした口腔領域の免疫応答を賦活化させる誘導機序を解明するために、マウスを用いて生体内における免疫細胞や液性因子の動態について検討した。 乳酸菌をゾンデを用いて胃内投与を行ったところ,対象群と比べて唾液中の抗菌性ペプチド(βディフェンシン3;bD3)が顕著に誘導されることがタンパクおよび遺伝子レベルで示された。bD3は主として上皮細胞から産生されることから,舌,歯肉から採取したtotal RNAを用いて検討したところbD3特異的mRNAが顕著に誘導されることが示された。上皮細胞におけるbD3の産生誘導は外来抗原刺激を受けた上皮細胞から産生されるIL-22が自身の細胞もしくは血流を介して近傍に作用することや粘膜下固有層に局在する樹状細胞が産生するIL-23により誘導・活性化されrたエフェクターT(Th22)細胞が報告されている。そこで,乳酸菌刺激により腸管上皮細胞から血流を介した口腔組織への作用を検討したところ,乳酸菌摂取マウスでは血液中IL-22が顕著に産生することが認められた。さらに口腔組織(歯肉・舌)におけるIL-22受容体(R)が有意に増加していた。また、拮抗作用を示すIL-22R Binding protein は逆相関することが示された。これらの結果から乳酸菌の胃内投与により腸管上皮細胞が産生するIL-22は血流を介して口腔組織を活性化することが示唆された。 また、乳酸菌投与による腸管を起点とした免疫細胞動態を検討するために光変換蛍光タンパク発現(KikGR)マウスを用いて検討したところ、対象群(PBS摂取)に比べて頚部リンパ組織まで遊走することが確認できた。このことから,乳酸菌の胃内投与により全身免疫の賦活化は血流を介したIL-22などの液性因子や遊走能をもつ免疫細胞によることが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、乳酸菌により活性化された腸管免疫システムは液性因子(サイトカイン)や免疫細胞による腸管を起点とした免疫賦活化は全身の遠隔臓器に波及することが示唆される。IL-22の産生細胞として近年注目されているエフェクターT細胞(Th22) や3型自然リンパ球(Innate lymphocytes cells type 3: ILC3)が考えられる。Th22 は主に獲得免疫システムに関わり,ILC3は自然免疫システムとしていずれも感染防御や生体向上性の維持・亢進に関与すると考えられるので,今後は,Th22やILC3の分化・誘導機序を検討する。 生体内におけるTh22/ILC3の細胞動態を検討するために,当研究室で所有している光変換蛍光タンパク質発現(KikGR) マウスを用いてIn vivo試験系を確立し検討する。KikGRマウスは紫外線照射により起点とした臓器/組織から細胞遊走の検討が可能であり,今後はより詳細は免疫細胞について検討を行う。 また,腸管上皮細胞や歯肉上皮細胞におけるbD3産生機序を解明することを目的にIn vitro試験系を確立する。In vivo試験 とIn vitro試験の両者を検討することで,腸―口腔相関を制御する免疫系バイオマーカーの探索を行う。
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