研究課題/領域番号 |
21K09879
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
林 誠 日本大学, 歯学部, 教授 (00301557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | リン酸カルシウムセメント / 象牙質知覚過敏症 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,様々な口腔保健に関する施策によって残存歯数が増加し,経年的な歯根露出によって象牙質知覚過敏症が高頻度で発症している。さらに,歯質表層の損失を招くTooth Wearが知られるようになった。Tooth Wearによる歯の咬耗・摩耗・酸蝕でも,象牙質知覚過敏症が多数認められている。 一方,リン酸カルシウムセメントは代表的な骨補填材である。今回,セメント粉末を改良することによって,効率的にハイドロキシアパタイトの生成を可能とした新規リン酸カルシウムセメントを試作した。 本研究では,本セメントの象牙質知覚過敏抑制剤としての有効性について,基礎的に解析し実用化の一助となる基礎的データを取得する。
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研究実績の概要 |
国民の口腔衛生状態は改善傾向が進んでおり,残存歯数は増加している。一方,歯数の増加に伴って歯肉退縮による歯根面の露出が認められるようになり,象牙質知覚過敏症は高頻度で発症している。 リン酸カルシウムセメントは,水分と混和させることによって骨や歯の主成分であるヒドロキシアパタイトが生成される。本研究の目的は,一般的なリン酸カルシウムセメントの粉末を改良し,一つの粒体中にα-TCPとTTCPを分散させた,新規二相性リン酸カルシウムセメント(BCPC)を試作し,象牙質知覚過敏抑制材としての有効性について検討することである。 象牙質知覚過敏症の症状の抑制には,露出した象牙細管の封鎖が重要となる。そのため昨年度は,BCPCの粉末の大きさが象牙細管の封鎖に影響を及ぼすと考え,異なる粉末粒径のBCPC,すなわち平均粒径9.96μmのlargeサイズのBCPC-Lと平均粒径4.84μmのsmallサイズのBCP-Sを試作した。そこで令和4年度では,試作した両BCPCの粉末の形態観察を走査電子顕微鏡にて行った。次に,セメントとして重要な理工学的性質である,硬化時間について測定した。さらに,BCPC-LとBCPC-Sが水分と反応して生成した結晶について,エックス線回折法にて解析した。 被験材料の顕微鏡観察ではBCPC-LおよびBCPC-Sは,いずれも不規則な形状を示し,昨年度に測定した粒度分布と大きな差は認められなかった。また,硬化時間はBCPC-Lが17±0.0分,BCPC-Sが8±0.0分であった。さらに,エックス線回折では,BCPC-Sの方がBCPC-Lよりもハイドロキシアパタイトの高い結晶化が認められた。以上の結果から,異なる粒径のBCPC粉末の試作を視覚的に確認することができ,粒径が小さいほど短時間で硬化し,さらに高い結晶化を認めることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの到達度としては,「おおむね順調に進展している」と考えられる。令和3年度では新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり,異なる粒径の新規二相性リン酸カルシウムセメント(BCPC)の試作は実施できたが,当初の研究実施計画より進捗状況はやや遅れていた。しかしながら,令和4年度では新型コロナウイルス感染症による制限もある程度緩和され,異なる粒径のBCPC粉末の形態観察,硬化時間の測定,BCPCの硬化物の生成過程のエックス線回折を用いた分析まで実施することができた。以上のことから,想定した計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では異なる粒径のリン酸カルシウムセメント(BCPC)の試作を,令和4年度では試作BCPCの理工学的特性についての検討を,それぞれ行ってきた。令和5年度では,これらの実験結果をもとに,より臨床に近い条件下でBCPCを象牙質に応用した際の解析を予定している。さらに,プラークコントロール状態が象牙質知覚過敏症の病態に影響を及ぼすことが知られているため,口腔細菌を用いたBCPCへの付着状態についてもin vitroレベルで評価をしたいと考えている。
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