研究課題/領域番号 |
21K09879
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
林 誠 日本大学, 歯学部, 教授 (00301557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リン酸カルシウムセメント / 象牙質知覚過敏症 |
研究実績の概要 |
近年の口腔保健に関する様々な施策によって残存歯数が増加し,経年的な歯根露出によって象牙質知覚過敏症が高頻度で発症している。一方,リン酸カルシウムセメントは代表的な骨補填材である。粉末は2種のリン酸カルシウムから構成され,水分と混合させることによってヒドロキシアパタイトが生成される。本研究では従来のセメント粉末を改良し,一粒体中にα-tricalcium phosphate(α-TCP)とtetracalcium phosphate(TTCP)を均一に分散させた新規二相性リン酸カルシウムセメントを試作し,本セメントの象牙質知覚過敏抑制材としての有効性について検討することを目的とした。 令和3年度では,まず粒径の異なる新規二相性リン酸カルシウムセメントを試作した。すなわち,調製時平均粒径を島津遠心沈降式粒度分布測定装置にて測定したところ,平均粒径9.96μmであった。そこで粉末粒径が象牙質知覚過敏抑制材の特性に重要と考え,さらに粒径が小さな粉末をジルコニアボールミルを使用して作製し,平均粒径4.84μmの粉末も試作した。 次にウシ下顎前歯から象牙質片を切り出し,超音波洗浄にて象牙細管を開口させた歯片を象牙質知覚過敏想定モデルとして作製した。上記の粒径の異なる新規二相性リン酸カルシウムセメント粉末を,ヒドロキシアパタイトの生成効率を向上させる目的でリン酸カルシウム溶液を使用して練和し,象牙質片に塗布して水洗,乾燥後,走査型電子顕微鏡で観察した。その結果,2種の新規二相性リン酸カルシムセメントは象牙細管を生成物により封鎖されており,象牙質表面には粒状堆積物が認められ,象牙質知覚過敏抑制効果が推察された。 現在,象牙細管を封鎖した生成物をエックス線回折法を利用し,ヒドロキシアパタイト生成状態の解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの到達度としては,「やや遅れている」と考えられる。令和3年度は,異なる粒径の新規二相性リン酸カルシウムセメントの試作は実施できた。その後,当初の研究実施計画では,本セメントの生成物に関してエックス線回折法を利用した解析を終了させ,粒径の違いがヒドロキシアパタイトの生成状態に及ぼす影響について考察したいと考えていた。しかしながら,新型コロナウイルス感染症の拡大による影響もあり,想定した計画より若干遅れていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では,令和3年度に実施した走査型電子顕微鏡を用いた象牙質片の観察と本セメントの生成物に対するエックス線回折法を利用したヒドロキシアパタイト生成状態の解析は継続実施する予定である。 新型コロナウイルス感染症の拡大状況にも研究の進行は影響を受けてしまうことは考えられるが,本年度では実際の臨床状況を模倣させた条件下での解析に関して,令和3年度と同様な方法で検討し,年度末までには象牙質知覚過敏症抑制材としての本セメントの有用性について,in vitroレベルで評価したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】 令和3年度の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,参加予定していた第115回日本歯科保存楽器秋季学術大会(新潟)などがオンライン開催となり,旅費が不要となったため残金が生じた。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大による各種制限より,当初予定していた研究計画の遂行が困難であったため,残金が生じた。 【使用計画】大きな実験計画に変更はないが,令和3年度の研究の一部継続をしながら繰越金と令和4年度請求額を合わせて,令和4年度の計画に即して消耗品等に使用する。
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