研究課題/領域番号 |
21K10219
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田村 宗明 日本大学, 歯学部, 准教授 (30227293)
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研究分担者 |
泉福 英信 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (20250186)
阿部 仁子 日本大学, 歯学部, 准教授 (70508671)
植田 耕一郎 日本大学, 歯学部, 教授 (80313518)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 高齢者 / 口腔ケア / 予防 / 歯周病 / 口腔と全身疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では天然成分やイオンなどのさまざまなサンプルから口腔微生物に対して発育や病原性を抑える効果を発揮する新たな成分を見出すとともに、その抗菌効果のメカニズムを明らかにする。次に、発見した成分のジェルを開発して動物や人の口腔に投与後、それぞれの口腔内微生物に及ぼす抗菌効果や動物と人への影響について確認する。 これらの結果から口腔内の病原菌が引き起こす疾患、およびこれらの関与が報告されている全身性疾患に対する新しい予防法を確立する。
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研究実績の概要 |
昨今、口腔病原微生物が口腔内疾患のみならず全身性疾患の発症に関与している可能性が報告されている。特に口腔内清掃の不良者や免疫機能を含め心身的な低下がみられる高齢者では口腔の清掃状態と口腔内外疾患発症との関わりが問題となっている。高齢化社会を迎えている本国では、全人口に対して高齢者の比率が年々高くなっており、口腔フレイル症状と要介護高齢者数の増加から莫大な高齢者医療費の増加を引き起こす可能性が高い。 そこで口腔内外疾患発症を予防する目的として高齢者の口腔ケアは非常に重要である。 申請者らは、天然抗菌成分のカテキンを含有した口腔ケアジェルを開発してう蝕、歯周病ならびにカンジダ症の原因菌の発育を抑制した。さらに、口腔の正常維持に関わる菌には影響を与えない選択的抗菌効果を発見し、口腔疾患が関与する全身疾患の発症予防の可能性と臨床応用への期待を導いた。この経験からさらに高齢者の口腔ケアに有用な新規抗菌成分を発見してそれを利用した口腔ケアジェルを開発し、その臨床応用の可能性について検討することとした。さまざまな天然成分やイオンなどから口腔病原菌に抗菌効果を発揮する成分検索を行った結果、ワサビに含まれている揮発性のアリルイソチオシアネートなどのいくつかの天然植物成分と、バイオアクティブガラスから放出される6種類のイオンが抗菌効果を発揮することを見出しこれらの成分は口腔病原微生物に対して抑制効果を示していた。さらにこれら以外の口腔での使用が可能と思われる新規抗菌成分を見出した。したがって、これらの成分を口腔ケアに使用することは高齢者の口腔内環境の改善とQOLの向上に貢献できるものと考えられ、今後抑制メカニズムを詳細に検討し、動物および臨床実験を重ねてこれら口腔ケア剤の臨床応用の可能性について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者のための新規抗菌性口腔ケア剤の開発を目的として、令和4年度はin vitro実験としてアリルイソチオシアネートの抗菌効果実験を実施した。アリルイソチオシアネートとカテキンの抗菌効果について、高齢者で装着率が高い義歯のレジン床と親和性が高く、口腔カンジダ症の原因真菌であるCandida albicansを供試して実験を行った結果、まず低濃度で発育抑制することを再確認し、さらにこの真菌の病原因子である1)バイフィルム形成能を抑制すること、2)病原性を発揮する菌糸形変換を阻害すること、3)組織破壊性のタンパク質分解酵素ならびに脂質分解酵素の活性を阻害すること明らかにした。そしてそれぞれの病原因子発揮に関わる細胞内遺伝子発現量をreal-time PCR法で解析したところ、遺伝子発現レベルでこれらの因子発現を抑制していた。 In vivo実験では、動物実験は大学施設の移設に伴い、実験計画通りに進めることが出来ずにいた。また、臨床実験も継続中のコロナウイルス感染症のため共同研究機関からの許可を得ることもできず実施を控えている。 しかし、新たに歯磨剤や口腔ケア剤に使用可能な新規抗菌成分を含む臨床用サンプルの開発が終了し、近々の臨床実験再開に向けて準備を着々と進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.新規抗菌成分の抗菌機序について:アリルイソチオシアネートとバイオアクティブガラスから放出する6種類のイオンとともにポリリン酸系の抗菌成分を供試し、これら成分によるさまざまな口腔微生物の細菌細胞内の変化、特にタンパク分解酵素や代謝産物量への影響について調査し、これら病原因子に関わるmRNA発現量の変化をreal-time PCRで測定するなど様々な解析を行って抗菌効果の機序を明確にする。 2.感染動物実験:う蝕原性菌または歯周病原因菌の定着動物(マウスもしくはラット)を用いて、前述の抗菌成分を含むジェルの塗布により口腔内病原菌数の変化を培養法もしくはreal-time PCRで評価する。さらに口腔内軟組織および血液を回収し、サンプル内のサイトカイン量を計測して病原菌のみならず宿主組織への影響も検討する。 3.臨床実験:賛同を得ている病院・施設にて新たな抗菌成分も含めて様々なジェルを口腔内に塗布、もしくは抗菌成分を添加した歯科材料を口腔内に装着する。処理前後の唾液ならびに歯肉溝滲出液をサンプルとして採取し、培養法による集落数の変化、real-time PCR法や次世代シークエンシング法を用いた遺伝子量の変化から菌数と菌叢を解析し、その影響を明らかにすることで口腔内外疾患の発症予防法を確立させる。同時に口腔微生物の代謝産物の変動も確認するとともに誤嚥性肺炎やウイルス性疾患(カテキンの口腔微生物が産生するインフルエンザ解離酵素活性の阻害を確認済み)の予防効果や、口腔微生物叢の変化が腸炎や腸内細菌叢への影響などを、被験者の臨床症状、体温測定および各種検査で評価する。
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