研究課題/領域番号 |
21K10265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 准教授 (60546472)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 口腔細菌 / 呼吸器ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの呼吸器ウイルスによる感染症は、全世界に甚大な被害をもたらしている。そのため、呼吸器ウイルス感染症予防対策の構築は重要である。呼吸器ウイルスの侵入門戸である口腔には多くの細菌が常在しているため、呼吸器ウイルスの感染に口腔細菌が影響を及ぼしている可能性がある。そこで本研究では、口腔細菌が呼吸器ウイルス感染に及ぼす影響を明らかにし、良好な口腔環境が呼吸器ウイルス感染対策に有効であることを示す分子基盤の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
歯周病や不良な口腔衛生状態が、インフルエンザや新型コロナの発症・重症化リスクになるとの臨床研究が多数報告されている。呼吸器ウイルスの侵入門戸である口腔には多くの細菌が常在していることから、呼吸器ウイルス感染症の発症・重症化に口腔細菌が関連していると考えられる。そこで本研究は、口腔細菌が呼吸器ウイルスの感染や重症化に及ぼす影響を分子レベルで明らかにすることを目的とした。 SARS-CoV-2が感染するためには、宿主細胞表面に発現するプロテアーゼTMPRSS2によりウイルスのスパイクタンパク質が開裂される必要がある。また、インフルエンザウイルスにおいてもTMPRSS2が存在することにより感染を促進させることが報告されている。本年度は、呼吸器細胞株を口腔細菌により刺激することにより、TMPRSS2の発現を亢進することを明らかにした。さらに、その発現に関わるシグナル伝達経路を検討した結果、NF-κBを介してTMPRSS2が発現している可能性があることを明らかにした。また、口腔細菌の刺激によりTMPRSS2の発現が亢進している呼吸器細胞株にインフルエンザウイルスを感染させた結果、ウイルス感染が促進していることを明らかにした。さらにTMPRSS2阻害剤であるカモスタット存在下でウイルス感染実験を行った。その結果、口腔細菌による刺激を行った細胞であっても、ウイルスの複製は抑制されていた。 以上の結果から、口腔細菌によりTMPRSS2の発現が亢進し、呼吸器ウイルス感染が促進する可能性が示唆された。したがって、良好な口腔環境を保つことは、呼吸器ウイルス感染症の発症・重症化を予防できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにSARS-CoV-2が感染するために必須であるスパイクタンパク質の開裂が、口腔細菌が産生するプロテアーゼによっても開裂することを明らかにすることができた。 また、口腔細菌により呼吸器細胞株を刺激することにより、SARS-CoV-2やインフルエンザウイルス感染を促進させるTMPRSS2の発現を亢進することが明らかとなり、さらにインフルエンザウイルスの感染が促進することも明らかにすることができた。口腔細菌が呼吸器ウイルス感染を促進させることが明らかになりつつあることから、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SARS-CoV-2スパイクタンパク質偽型レンチウイルスを用いて、口腔細菌の刺激によりTMPRSS2の発現が亢進している呼吸器細胞株への感染実験を行う。また、TMPRSS2をsiRNAによりノックダウンした細胞に口腔細胞による刺激を加え、SARS-CoV-2スパイクタンパク質偽型レンチウイルスもしくはインフルエンザウイルスを感染させる。この実験により口腔細菌によるTMPRSS2発現亢進が、ウイルスの感染促進に実際に関わっているか否かについて明らかにする。
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