研究課題/領域番号 |
21K10424
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
川上 隆茂 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (40441589)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | メタロチオネイン / 脂肪肝 / 高脂肪食 / 肝線維化 / 亜鉛 / 耐糖能異常 / 生活習慣病 |
研究開始時の研究の概要 |
生活習慣病の発症や進行には、亜鉛代謝異常が関与することが報告されている。一方、メタロチオネイン(MT)は亜鉛によって誘導されるタンパク質として知られている。本研究の目的は、糖尿病や脂肪肝に対する亜鉛補充におい て、MTが最も直接的な生体防御因子である可能性を検討し、その作用メカニズムを明らかにするとともに、亜鉛による有効な治療法を確立することである。本研究課題から得られたデータや知見は、糖尿病や脂肪肝の基礎研究だけでなく臨床領域において幅広く貢献できると考えられ、国際的にも利用価値が高いものとなると予想される。
|
研究実績の概要 |
亜鉛の脂肪肝に対する重要性は、様々な基礎研究や疫学研究から示されているが、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。我々は、メタロチオネイン欠損(MTKO)マウスを用いた解析から、亜鉛により誘導されるMTが、高脂肪食(HFD)誘導性の脂肪肝発症の抑制に重要であることを見出している。本年度は、野生型(WT)およびMTKOマウスを用いて、HFD誘導性の生活習慣病に対する亜鉛の抑制効果について、トランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行った。また、HFDにより脂肪肝を発症させたマウスを用い、主に肝線維化に対する亜鉛の効果やMTの役割について検討した。 トランスクリプトーム解析の結果、脂質代謝、ステロイドおよびストレス応答などに関わる様々な遺伝子が変動していた。また、HFD誘導性の脂肪肝を発症させたマウスに対する亜鉛補充の効果を検討したところ、HFD誘導性脂肪肝を発症させたWTマウスでは、亜鉛投与の有無にかかわらず肝線維化への進展は確認されなかったが、HFDによって生じた脂肪肝病変は亜鉛補充により顕著に改善した。一方、MT欠損マウスへの亜鉛補充は、脂肪肝病変の増悪化や肝線維化への進展を改善しなかった。肝線維化マーカーの解析から、WTマウスでは、HFDにより亢進したTimp1とActa2 mRNA発現量が、亜鉛補充により通常食摂取レベルまで低下した。HFD摂食群間での比較解析の結果、MT欠損マウスは野生型マウスよりも、全ての肝線維化マーカーの有意な増加が認められた。MT欠損マウスへの亜鉛補充は、線維化マーカーmRNA発現量に影響を与えなかったか、あるいは低下させてもその抑制率はWTマウスよりも低値であった。以上より、亜鉛補充は脂肪肝形成後や肝線維化進展に対して有効な予防・治療薬となりうるが、その効果発現にはMTが重要な役割を担うことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の予定である「脂肪肝形成後に対する亜鉛の改善効果」において、1)肝臓および脂肪細胞の組織学的解析、2)耐糖能の比較解析、3)肝臓および血漿の金属濃度測定、4)肝線維化関連遺伝子mRNA発現量を解析することができた。また、糖尿病・脂肪肝発症に関するトランスクリプトーム解析を行った。さらに、「肝細胞の脂肪蓄積に対するMT-IおよびMT-IIの寄与」に関して、マウス肝細胞株であるAML-12にCRISPR-Cas9システムを用いて、MT-I、MT-IIおよびMT-I/II遺伝子のゲノム編集を行ったところ、遺伝子欠損効率が約50%から75%となった各細胞群を得ることができた。現在、限界希釈法を用いてシングルセルクローニングを行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画(3年目)に沿って、「脂肪肝形成後に対する亜鉛の改善効果」を継続して検討し、「亜鉛-MT複合体投与による糖尿病および脂肪肝改善の可能性」を検討する。また、トランスクリプトーム解析から得られた情報をもとにリアルタイム-PCR法を用いた解析を実施する。
|