研究課題/領域番号 |
21K10446
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高尾 総司 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (50335626)
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研究分担者 |
頼藤 貴志 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (00452566)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | メンタルヘルス対応 / 復職判定 / AI / 人工知能 / メンタルヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、人工知能を活用することで、産業医等の産業保健スタッフのみならず人事担当 者が、メンタル不調者の復職判定面談などを実施する際の標準化された支援システム構築を 行うことを目的とする。未曾有の災害や新型コロナウイルス感染症の拡大により、現時点で 直接的にメンタル不調者が増えているとの指摘まではないものの、就業者への負荷の点から は十分に懸念すべきである。また、標準化の利点は中小企業にも展開しうることに加え(わが国の企業数420万に対して、産業医選任義務のある50人以上の企業はわずか16万程度)、 在宅勤務などで進みつつある非対面による面談対応などにおいても発揮されうるものである。
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研究実績の概要 |
働き方改革に関する議論の中で、産業医機能の強化が期待されている。なかでもメンタルヘルス不調者への対応は大きな課題である。いまだに、産業医が身につけるべき知識や能力として、「精神科領域」の内容を挙げる向きはあるものの、内科や外科を専門とする大多数の産業医が躊躇するのは当然のことである。本研究では、人工知能を活用することで、産業医等の産業保健スタッフのみならず人事担当者が、メンタル不調者の復職判定面談などを実施する際の標準化された支援システム構築を行う。 令和3年度は、既存の産業医意見書、対応事例のテキストデータを用いて、自然言語処理技術の技術により、復職判定の予測を行うモデルと、類似事例を抽出するモデルを作成した。令和4年度は、そのAIを用いたWEBシステムを構築するために、復職判定を利用したいユーザー向けにユーザーインターフェースを作成した。 具体的には、相談記録をアップロードするための機能を持つWEBページと、継続して過去に入力したケースを呼び出せるようにデータベースを構築した。 設計上の留意点を踏まえ、WEBページによるユーザーインターフェースを作成した。画面遷移としては、「ユーザーログイン画面」「メイン画面」「内容確認画面」の順で表示するようにした。メイン画面における入力箇所は以下とした。①相談が初回か継続か、②「タイトル」の記入、③相談記録入力(貼り付け可能)、④最大療養期間、⑤療養中か就業中か。各ケースへの継続的な入力は、「①相談が初回か継続か」において「継続」を選択すると、過去に入力されたケースのタイトルを表示し、呼び出せるように実装した。 本ユーザーインターフェースを用いて、約50件の記録が登録され、その登録過程は円滑なものであったことから、問題なく動作しており、ユーザビリティについても問題は無いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度には、おおよその予定どおり、復職判定を行うモデルの構築および研究協力企業の募集を行い、一定数の協力企業を確保できた。また、令和4年度には、研究協力企業からセキュリティを確保した状態で、対応事例に関するテキストデータを提供してもらうためのユーザー向けインターフェースを作成できた。現在は、蓄積されたケースの記録を手動で取り出し、AIにより処理を行う形式となっているため、今後は、自動でアップロードされたデータを、システムが認識し、AIによる処理を行う方式にする必要がある。 やや事前の想定とは異なることが判明してきた点としては、AIに学習させるテキストデータとして、研究開始当初は、研究者らが事前に構築していたものと同様の事例対応に関するテキストデータおよびその転機(教師あり学習)に関する情報を想定していた。しかしながら、事例および転機のデータ数を、たとえばすでに構築した事例数の倍に増やすよりも、AIには、本テーマに関するさまざまなテキスト情報を「事前学習」として、むしろ質よりも量の点から学習させることのほうが有用ではないかという点についてAIモデルの作成に関する委託先とも協議し、事前学習データの選定を行うとともに、相談事例に関するユーザーインターフェースに、上記のとおり、手動でAIによる処理を行う形式ではなく、自動でシステムが認識し、AIによる処理を行う(自動で相談者に結果がフィードバックできる)仕組みにすることで、転機データはセットにならなくても、事例数としても飛躍的に多い相談(対応)事例に関するテキストデータを取得することを優先することを想定して、研究計画を修正している。 一方で、引き続き研究協力企業の募集も行うとともに、より一般的にWEB上のユーザーインターフェースから相談事例を入力してもらうための案内(動画による説明等)の準備を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施方針としては、以下の3点に注力する。(1)事前学習データ(できるだけ大量のテキストデータ)の選定、(2)ユーザーインターフェースのフィードバックの自動化、(3)(2)を用いて公開されたWEBサイトから、できるだけ量的に相談事例テキストデータを収集する。 (1)事前学習データとしては、研究者らが執筆した書籍等のテキストデータも候補にはなるが、データ量としてみたときには、それほどの量にはならない。したがって、一般的なAIが学習する際と同様に、インターネット上でアクセス可能な情報の中から選定を行っていく。これに際しては、もとよりそうしたAIによる学習等を明確に許可するようなサイトの構成というのは珍しく、許可を個別に得ていくような方法は考えにくい。しかしながら、インターネット上でアクセス可能だからといって、すべての情報を事前学習に利用してよいとは考えるべきではなく、今回の研究の範囲では「公開」されていることが前提とされているテキストデータ(たとえば、厚生労働省が公表している指針など)を中心に選定を行う。 (2) 現時点では、蓄積されたケースの記録を手動で取り出し、AIにより処理を行う形式となっているため、今後は、自動でアップロードされたデータを、システムが認識し、AIによる処理を行う方式にする。この点については委託先と検討をすすめる。 (3)(2)の進捗状況に依存するが、いずれにせよ、いきなり企業担当者の登録もなく完全に公開した状態で事例相談テキストデータを収集する方式には至らないものと想定していることから、研究協力企業に準ずるものの、たとえば協定書や秘密保持契約等の締結までは求めないものの、WEBサイトから企業名、担当者名等は登録をしてもらったうえで、ユーザーインターフェースのURLを案内するようなかたちで事例テキストデータを収集する。
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