研究課題/領域番号 |
21K11260
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
李 佐知子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (80599316)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 痙縮 / Ia線維 / PLD-mGluR / DHPG / 脊髄損傷 / Ia活動抑制 / 抑制性介在神経細胞 / リハビリテーション |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷後の難治性後遺症の一つに脊髄反射亢進を示し、不随意的筋活動をおこす 痙縮がある。現在使用されている痙縮治療薬は、経口抗痙縮薬として脊髄運動神経細胞を抑 制する薬剤が使用されているが、副反応があり効果は限られている。 本研究では、脊髄反射回路を構成する Ia 感覚神経細胞をターゲットとした新たなコンセプトに基づいた「筋紡錘内での Ia 線維感覚器 受容体への拮抗薬投与」による痙縮治療法を提案する。本治療による反射回路の抑制によっ て、1痙縮が軽減するか、および2脊髄損傷時の抑制性脊髄内介在神経細胞の機能低下の抑制を抑制できるかを確認することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究はの目的は、脊髄損傷後の難治性後遺症の一つである「痙縮」の新しい治療コンセプトを検証することである。これまでの痙縮治療では脊髄運動神経細胞を活動抑制することで骨格筋の収縮自体を弱めていたが、これでは随意運動も抑制してしまい運動麻痺の改善も見込めない。新しい治療コンセプトは、脊髄反射の亢進を呈する痙縮を、Ia線維の活動を抑制することで軽減することである。Ia線維細胞受容器終末部に存在する受容体アンタゴニストであるDHPGを痙縮筋に投与することで痙縮が軽減するか、また運動機能が改善するかを検討した。 頸髄半切モデルマウスを作成後、痙縮発症を確認したマウスをDHPG群とvehicle群に分け痙縮の有無を確認した。結果、vehicle群と比較してDHPG群は有意に5Hzにおける刺激頻度依存的H反射の弱化(Rate dependent depression: RDD)が確認され、痙縮症状の正常化が確認された。特にDHPG群において投薬前と後で比較すると1~5Hzの刺激頻度全てにおいて有意にRDDが確認された。これにより、脊髄損傷後痙縮発症マウスにおいてDHPG投与により電気生理学的評価において痙縮の軽減が確認された。脊髄伸張反射の亢進は、脊髄alpha運動神経細胞にIa線維が過剰に接続することから生じること一つの原因と考えられていたことから、本研究でも同様に現象が生じているかを確認することとした。その結果、脊髄損傷によって脊髄alpha運動神経細胞に接続するIa線維軸索終末がshamと比較して有意に増加し、DHPGによってその増加した接続が正常化することが確認された。一方、DHPGの投与による運動機能の改善について、現在三次元動作解析などの複数の運動機能評価指標を用いて解析しているところである。現状ではばらつきが大きく、DHPG群及びVehicle群の間で差は確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な実験についてはほぼ終了した。 副次的な実験については現在解析中であり、今年中には結果がわかる状況である。 また抑制性脊髄介在神経細胞の機能低下について、遺伝子改変マウスを用いて実施している。本実験については少し進捗が遅れている。その原因として遺伝子組換えマウスの繁殖が不安定で必要とする動物数を確保できていないことが大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗が遅れている抑制性脊髄神経の機能低下について、組換えマウスの繁殖方法について改良を行っている。この改良に伴い目的とする遺伝子改変マウスの動物数が確保できる見込みである。これらのマウスを用いて痙縮マウスを作成し、免疫組織化学染色法を用いて機能低下について確認する予定である。免疫組織科学染色法のプロトコルについては、現在作成中である。
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