研究課題/領域番号 |
21K11472
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
白土 健 杏林大学, 医学部, 講師 (60559384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | PAMP / DAMP / インフラマソーム / マクロファージ / 炎症性応答 / シグナル伝達 / 機能性食品 / 新型コロナウイルス / SARS-CoV-2 / スパイクタンパク質 / 習慣的運動 / 全身性炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2による重度炎症機構におけるスパイクタンパク質S1サブユニット(S1)の役割とそのメカニズム、および習慣的運動の予防効果を実験科学的に明らかにすることにより、新型コロナウイルス感染症COVID-19の重症者および死亡者を抑制するための科学的根拠に基づいた運動処方を確立することを目的とする。具体的には、1)SARS-CoV-2のS1による全身性炎症とそのメカニズム、2)SARS-CoV-2のS1による全身性炎症に対する習慣的運動の予防効果、3)SARS-CoV-2のS1による全身性炎症に対する糖尿病の影響と習慣的運動の予防効果を検討する。
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研究実績の概要 |
マクロファージは、toll様受容体(TLR)で病原体関連分子パターン(PAMP)を認識すると、炎症性サイトカインを産生分泌する。炎症による組織傷害に伴って細胞外に放出された損傷関連分子パターン(DAMP)は、NLRP3インフラマソームの活性化を引き起こす。その結果、活性化されたカスパーゼ-1は、IL-1βやIL-18の前駆体を切断して成熟型の分泌を増強する。アスパラガス茎抽出物(EAS)は、Sタンパク質(=SARS-CoV-2由来PAMP)によるマクロファージのTLR4シグナルを介したIL-1βの産生誘導を軽減する。令和4年度は、EASの抗炎症メカニズムをさらに明らかにするため、DAMPによるマクロファージのNLRP3インフラマソームの活性化に対するEASの効果を検討した。成熟期雄性マウスから腹腔滲出マクロファージを採取し、リポ多糖(=PAMP)でプライミングした。培養液を除いた後、EASまたはデキストリン(=溶媒対照)の存在下において、ニゲリシンまたはATP(=DAMPs)で刺激した。炎症性サイトカインの分泌量とインフラマソーム複合体構成タンパク質の発現量をELISA法とウェスタンブロット法で各々分析した。ニゲリシンおよびATPによるIL-1βの分泌誘導は、EASによって大きく軽減された。一方、NLRP3インフラマソームの活性化を必要としないIL-6の分泌誘導は、EASの影響を受けなかった。さらに、EASは、インフラマソーム複合体を構成するNLRP3とASCの発現量には影響を及ぼさずに、ニゲリシンによる未成熟型のIL-1β、IL-18およびプロカスパーゼ-1の発現量低下を抑制した。以上より、EASは、PAMPによるTLRシグナルの活性化だけでなく、DAMPによるNLRP3インフラマソームの活性化を抑制することによって、マクロファージの炎症性応答を軽減することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和4年度は、学内および学外の講義コマ数の増加に伴う準備、その他の新たな校務等に大きく時間を割いたため、本研究課題へのエフォートが当初の予定よりも極端に減った。その結果、動物を用いた運動学的実験の実施が難しくなり、本研究課題とは「抗炎症効果」という視点は共通しているものの、直接的には関連がない細胞を用いた栄養学的実験の実施に留まった。一方、COVID-19を含む急性下気道感染症における肺胞マクロファージの役割を、「貪食作用」、「炎症性応答」、「エフェロサイトーシス(死細胞に対する貪食作用)」に焦点を当てて纏めた総説論文が出版準備中である(Shirato, et al.: In. Phagocytosis - Main Key of Immune System [working title]. Athari and Nasab (Eds.). doi: 10.5772/intechopen.110509)。以上の背景から、本研究の進捗状況は「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、前年度の努力が実り教育活動は軌道に乗っている。本研究課題の申請当初に予定していたSARS-CoV-2のSタンパク質に加えて、エンベロープタンパク質による全身性炎症に対する習慣的運動の予防効果を個体・細胞レベルで検討する予定である。
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