研究課題/領域番号 |
21K11933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
西 一樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00208125)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | カメラ / イメージセンサ / 傾き計測 / 光軸歪み / 解像度 / ディストーション / シャインプルーフの原理 |
研究開始時の研究の概要 |
モバイル端末・車載・監視用カメラはもはやデジタル社会に不可欠なツールである。小型化されたカメラモジュールは光学アライメント調整が難しく、組み立て精度不足により画質低下を招くことが問題になっている。特にレンズ・イメージセンサ間の僅かな傾きにより生じる「片ボケ」(画像上でボケが不均一になる現象)は画質上無視できない問題である。 本研究では、テストチャートの撮影と画像解析だけでセンサの傾きを高精度に検出可能な方法として、テストチャート・レンズ・イメージセンサ間の幾何学的配置と画像の振幅・位相の関係を利用することにより、キャリブレーションフリーな測定系を実現し有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
モバイル端末・車載・監視用カメラなどの小型カメラモジュールは、レンズ・イメージセンサの組み立て精度不足により画質低下を招き、特に「片ボケ」(画像上でボケが不均一になる現象)は無視できない問題である。本研究では、テストチャートの撮影とその画像解析だけでセンサ傾きの高精度検出を可能する方法として、テストチャート・レンズ・イメージセンサ間の幾何学的配置と画像の振幅・位相の関係を利用することにより、キャリブレーションフリーな測定系を実現することを目的としている。本年度は以下について実施した。 傾斜エッジ法の高精度化: センサ傾きにともなうボケの僅かな変化を検出するために国際標準のMTF計測法である傾斜エッジ法の高精度化を行った。ビン処理によるローパス効果を補正するフィルタ処理を導入することにより、ボケ検出に不可欠な高域のMTF推定精度の向上を図っている。従来法と比較して高精度であることを数値シミュレーションにより確認した。 画像の振幅情報によるセンサ傾き測定法の確立: 正弦波チャートの撮影画像から各位置でのコントラストを画像の輝度振幅情報から求める方法について、光学設計ソフトによる数値シミュレーションおよび昨年度試作した実験装置により検証を行った。数値シミュレーションでは期待通りの結果が得られたが、カメラ撮影実験ではディストーションの影響が大きくセンサ傾きの正確な測定が可能になるまでには至らなかった。 画像の位相情報によるセンサ傾き測定法の確立: 正弦波チャートの撮影画像から位相成分を抽出し、画素間差分をとることにより画像各位置での局所周波数を求めることでセンサ傾きを推定する方法について有効性を検証した。ここでも数値シミュレーションでは所望の結果が得られたが、カメラ撮影実験では外乱の影響が大きいことが確認できた。ただし振幅情報を用いた場合より検出感度が高いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に試作した実験装置を用いて各手法の検証を行った。数値シミュレーションではいずれも理論通りの結果が得られたが、カメラ撮影実験ではディストーションや外乱の影響が大きいことが判明した。本年度予定していた位相情報を用いた方法についても検証できた。ただしカメラ撮影実験については期待通りの結果が得られていないことは次年度への課題である。 本年度は「傾斜エッジ法の高精度化」について国際学術雑誌への論文発表が1件、「画像の位相情報によるセンサ傾き測定法」については国際会議発表が1件、国際学術雑誌への論文発表が1件と成果の公表がしっかりできたことは評価できる。以上より課題の進捗状況として「おおむね順調に進展している」とした。 しかしながら、いずれも数値シミュレーションのみによる検証結果にとどまっているため、今後はカメラ撮影実験での有効性も含めて成果発表できるように進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまで検討してきた手法では、センサ傾きに対してチャートの傾きを調整しボケが均一かつディストーションが生じない角度を調べることで、センサ傾きを間接的に求めるものであった。しかしながらチャートの傾き中心を光軸上に合わせる必要があること、ディストーションや外乱に脆弱であるという問題が新たに判明した。 次年度ではその方策として、チャートの傾きを調整する代わりに光軸上を前後移動させる方法を新たに検討する。これにより合焦およびディストーションなしの状態をチャートの前後移動の各位置で検出できるようになり、それらを統合することで頑健な測定が期待できる。またディストーションが相殺されるように逆補正したテストチャートを用いることでディストーションフリーな測定を可能にする方法についても検討する。さらに画像の振幅情報と位相情報を統合することでキャリブレーションフリーな測定系の実現を目指す。
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