研究課題/領域番号 |
21K11959
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 愛知淑徳大学 (2022) 早稲田大学 (2021) |
研究代表者 |
小林 まおり 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90451632)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 音声知覚 / 雑音環境 / 聴覚的補完 |
研究開始時の研究の概要 |
音声は重要なコミュニケーション手段であるが、常に静かな環境で遂行できるとは限らない。他の音によって目的音声が覆い隠される雑音環境では、部分的に獲得できた音韻の手がかりを統合し、欠落した部分を推定することで音声を知覚している。本研究では、情報を統合するメカニズムについて、音韻修復現象を用いて検討する。その際、音一般に通用する情報統合の法則と、生成メカニズムに由来する音声独自の法則の二つが及ぼす影響に着目する。それぞれの法則とその相互作用が音韻修復に及ぼす影響を聴取実験によって検証することで、音一般に関わる処理プロセスと音声独自の処理プロセスの相互作用が音声知覚に果たす役割の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、雑音下での音声知覚のメカニズムの一端を明らかにするために、時間-スペクトル的に分布した音韻手がかりの統合過程について検討する。音響情報の組み合わせを[1]音一般に働く法則と[2]音声独自の手がかり、および[3]それらの組み合わせ、の3段階で操作する。[1]については音一般に働く法則としてBregman (1990)が提唱した発見的規則のなかから、調波性、立ち上がりの時間的同期、周波数変動の同期を音声信号処理によって操作する。[2]については音声独自の手がかりとして、調音結合に着目する。 [3]さらに[1]と[2]の組み合わせによって検証し、音一般に働く法則と音声独自の手がかりの相互作用が音韻修復に及ぼす影響について検討する。年次計画としては、2021年度では[1]について、2022年度には[2]について、最終年度では[3]について行う予定である。 2022年度では、[2]の音声独自の手がかりについての検討を中心に行なった。2021年度の分析前に行なった素人の音声についての先行研究の概観を発展させ、レビュー論文としてまとめ、発表した。この成果を踏まえつつ、アナウンサー音声の音響特徴について分析を行なったところ、アナウンサーの音声は素人に比べて高調波成分が大きい傾向が示唆された。現在は、この音響特徴が音声知覚に及ぼす影響について検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、[2]の音声独自の手がかりについて明らかにするため、音響特性の分析を中心に行なった。その結果、素人の音声に比べアナウンサーの音声はHNR(高調波対雑音比)が高い傾向にあることがわかった。これはアナウンサーの音声は高周波数帯域まで高調波成分がはっきりとみられることと関係していると思われる。また、その違いの程度は話者の性別によって多少変わることがわかった。これは、性別による音声の特徴に由来するものと推測される。この高調波成分の特徴が音声知覚に及ぼす影響について、知覚実験によって検討するため、刺激作成と予備実験を行なっている段階である。 さらに、昨年度の行なった分析で確認された音響特徴(プロの話者については2.5kHz帯域前後のエネルギーが大きい、一般人に比べて母音空間も大きい、各子音の音響特徴がはっきりと表れるなど)との関連について、話者の性別の観点から検討を進めている。 2022年度は知覚実験を行う予定であったことを考慮すると、予備実験に終始した本年度は計画が多少遅れていると言わざるを得ない。しかし、音響特徴の分析や先行研究について詳細に検討したことから、話者の性別によって聞き取りやすくするための方略が異なることが示唆された。そのため、雑音下の音声知覚のメカニズムにおいても用いられる手がかりについても性別の観点から検証する必要性が見出せたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに明らかにされたアナウンサー特有の音響特徴を組み合わせ、[3]音一般に働く法則と音声独自の手がかりの相互作用が音韻修復に及ぼす影響について検討する。その際、話者の性別に着目し、性別によって音韻修復に影響する要因に違いがないか、発話メカニズムの観点からも検証する予定である。
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