研究課題/領域番号 |
21K12230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
竹谷 文一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (50377785)
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研究分担者 |
松本 和彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 准研究主任 (50359155)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 湿性沈着 / 窒素化合物 / 基礎生産力 / 阻害物質 / 海洋生態系 / 基礎生産 / 船舶観測 / 栄養塩 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、大気から海洋への特に、湿性沈着プロセスによる栄養塩供給が海洋表層の基礎生産に与える役割を明らかにするため、貧栄養海域の西部亜熱帯太平洋において、船舶を用いた雲-雨-海洋の一気通貫現場観測を実施する。現場海域で、湿性沈着の有無を区別した表層海水、雨、加えて係留気球を用いた雲水の採取を実施し、船上でその湿性沈着有無の各海水を用いた基礎生産力測定実験を行う。同時に取得した海水・降雨・雲水サンプル中の栄養塩成分(窒素化合物、リン酸、ケイ素、鉄など)の分析を実施し、湿性沈着による栄養成分の基礎生産力への寄与についての定量化を行う。
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研究実績の概要 |
海洋表層の基礎生産力の変動要因を理解することは二酸化炭素の吸収などに大きく影響を及ぼすため,重要な課題の1つとなっている。特に、基礎生産力を規定する主要な因子である窒素化合物などで代表される栄養塩の大気から海洋への物質供給が、貧栄養海域では重要な供給過程であることが示唆されている。本課題は特に湿性沈着による海洋への栄養塩供給に注目し、2022年度は2022年4月~5月に行われた研究船「みらい」の物質循環航海に参加し、西部北太平洋亜熱帯海域において、現場海水を利用した植物プランクトンの培養実験を実施し、湿性沈着の影響を評価した。 現場で採水した表面海水に同海域で採取した窒素化合物などの濃度計測済みの雨水を添加し、培養実験により基礎生産力の指標となる飽和光下の最大光合成速度を求め、雨水添加の影響を様々見積もった。実験に用いた雨水は、カラムを通すことで、金属成分のみの除去を行い、窒素化合物濃度は変えずに、金属成分の有無による効果も合わせて検討できる前処理を行った。実験に使用した亜熱帯海域の海水中の窒素化合物の濃度は低く、貧栄養状態にあるにもかかわらず、高濃度の窒素化合物が含まれる雨添加による基礎生産力の向上は見られず、混合層の浅い成層した水塊ではむしろ低下するという結果が得られた。この実験で使用した雨水中の成分分析からは銅濃度が高いことが示されており、銅イオンなどにより基礎生産が阻害された可能性を示唆している。西部北太平洋亜熱帯海域では、大気からの湿性沈着では栄養塩供給による基礎生産力の向上のみでなく、阻害物質による低下も起こりえるということが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた観測・実験が実施できている。実験過程において、銅イオンによる基礎生産力の阻害効果という視点が新たに発生し、これらの効果に対する考察が行えたが、定性的な考察にとどまり、さらなる解析・検証実験等が必要と考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度においても西部北太平洋での研究航海に参加し、これまでの実験・観測結果をもとに湿性沈着の基礎生産力に対する影響を定量的に議論できる検証実験を行うとともに、解析結果をまとめ、成果発表を積極的に行う。
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