研究課題/領域番号 |
21K13129
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 大谷大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
前田 充洋 大谷大学, 文学部, 講師 (90804609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ドイツ帝国海軍 / シャルロッテンブルク工科大学 / 王立素材試験局 / 監査委員会 / アウグスト・ヴューラー / コマンド・テクノロジー / ドイツ帝国海軍研究 / 工科大学 / 科学技術 / 軍産学複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀後半以来その弱さの克服が課題とされてきたドイツの海軍は、1871年ドイツ帝国創建を機に、再編・増強の対象となる。そしてこれ以降ドイツ帝国海軍の増強は、第一次世界大戦前におけるドイツ帝国の外交、社会政策、経済政策の中で重要なトピックとなっていく。 本研究の関心は、海軍増強のマテリアルな側面における、軍・産・学の相互関係にある。これを考察するにあたって、特に1890年末代以降本格化された工業製品や素材の品質試験の方法や、関係組織のあり方に着目する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、19-20世紀転換期におけるドイツ帝国海軍とドイツの工科大学との関係を、製品品質試験という事例から明らかにすることにある。それにむけて2022年度は、いかにして工科大学が、海軍の依頼に応えるに足る施設や設備を有するにいたったのかを、一次史料に基づいて検討した。検討に用いた史料は、シャルロッテンブルク工科大学(現ベルリン工科大学)が1904年に発行した報告書『ベルリン工科大学内王立素材試験局――開設に向けての覚書』である。これは1904年に大学内の複数の部門が統合して王立素材試験局が創設されたさいに、これまでの経緯と活動(1904年まで)について記録した報告書である。なおこの報告書をめぐっては2021年度にドイツ帝国海軍にかんする研究の動向を網羅的に再確認した際に、分析が及んでいなかったことを確認済である。 この史料から、アウグスト・ヴューラーの素材耐久度試験に関する論考に端を発したこと、彼の後継の研究者(例えばシュパンゲンベルクら同大学の教員)により、素材の耐久性だけでなく機械技術の機能にかんする試験施設に発展したこと、それにより他機関や軍隊から多数の試験依頼を受け、公的な監査委員会としての立場を得るに至ったことを明らかにした。これにより、軍隊が民間の機関(とくに企業)を「篩」にかけたとするコマンド・テクノロジーを再検討する視角を得ることができた。軍隊が指定する技術的、品質的基準は軍隊内でのみ決定されるのではなく、別機関を介して客観的に判断されていた。 この成果を、2022年10月21日に開催された大谷学会(於大谷大学)で報告した(報告題目「ドイツ帝国におけるコマンド・テクノロジーの嚆矢――素材試験局の誕生とその活動をめぐって――」)。 さらにこの報告をもとに、6月に同大学の紀要である『大谷学報』に論文を投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、オンライン上で調査、収集可能な史料を用いての成果にとどまった。 帝国海軍の製品品質試験依頼、および素材試験局が実施した試験の結果にかんする史料Versuch mit Eisen und Stahl(鉄鋼の試験)がフライブルクの連邦軍事文書館に所蔵されていることは既に確認済であり、ドイツ帝国海軍と工科大学の関係を双方向的に検討するためには、この史料を検討する必要がある。 しかし、2022年度中にドイツ連邦共和国に史料調査に赴く予定であったが、COVID-19感染拡大防止対策の観点からいまだできていない。また、2022年度より現在の研究機関に着任したが、上手くスケジュールを調整することができず、2022年度の渡独史料調査を見送らざるを得なくなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】であげたドイツ(フライブルク)での史料調査を遂行することが喫緊の課題である。2023年5月8日におけるCOVID-19の「5類以降」にともない、水際対策が撤廃された後、具体的には2023年8~9月に渡独し、史料調査を実施するスケジュールを立てており、おおむね実施できる模様である(国際情勢に鑑みてスケジュールを調整することがある)。 この調査の成果報告については、2023年11月23日にクラウゼヴィッツ学会より研究報告の依頼を受けており、その場を借りて行う予定である。 論文による成果の刊行については、次年度以降となる予定である。
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