研究課題/領域番号 |
21K13318
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 北海道大学 (2022) 早稲田大学 (2021) |
研究代表者 |
相澤 俊明 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (00892192)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 幼児死亡率 / サバイバル分析 / ランダムフォレスト / 南アジア / インド / 条件付き現金給付 / 機会の不平等 / クラスター / 健康格差 / 乳幼児 / アジア |
研究開始時の研究の概要 |
2000年以降の目覚ましい経済発展により、多くのアジア開発途上国では幼児死亡率の改善がこれまで見られてきた。しかし、経済発展による恩恵は全ての人たちが一様に享受しているわけではなく、個人や家計単位で見た場合には、依然として、両親の社会経済的要因に基づく幼児死亡率の差がみられ、富裕層と貧困層の差は埋まっていないのが現状である。すべての子供たちが、社会経済的な環境に関わらず、平等に健康を享受することは国の持続可能な開発には不可欠な要素である。本研究ではアジアの開発途上国における幼児死亡率の社会経済的な不平等性を明らかにし、実証分析のエビデンスに基づき、不平等性を軽減させるための政策提言をおこなう。
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研究実績の概要 |
当該年度では、統計分析のプログラムの開発、データの分析を行った。本研究のテーマである、「南アジア地域における幼児死亡率の社会経済的な不平等性」を定量的に扱うためのフレームワークを整理し、家計の社会経済状況に応じた幼児死亡率を分析するための分析手法を前年度に引き続き発展させた。当該年度においては、インドにおける条件付き現金給付プログラムが幼児死亡率に与えた影響の推定をメインにおこなった。インドの幼児死亡数は世界で最も多く、世界全体の死亡数の約20%占めている。幼児期の死因は複合的な要因からなり、代表的なものとして妊娠期間中の不十分な栄養摂取、妊娠期間中の合併症、低体重児の出産などが理由として挙げられる。子供と母親の健康を増進させるためにインドはIGMSY(Indira Gandhi Matriya Sahayog Yojana)と呼ばれる条件付きの現金給付プログラムを2010年から2011年にかけて一部の地区で導入を開始した。サバイバル分析のフレームワークを用いて、幼児死亡率の変化(月齢0-12 か月)を推定することが分析の主な目的である。分析結果によれば、IGMSYによって、1,000人の生児に対して、月齢12か月の時点で約1.53人の命が救われたと推定され、約8.32%の幼児死亡率の改善が見られた。どのようなメカニズムで、IGMSYは幼児死亡率を改善させたかのかに関してはさらなる研究が必要である。分析結果をまとめた論文は国内の学会やセミナーで発表され、Health Policy and Planning誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、新しい分析のフレームワークと分析手法を開発することができ、国際学術雑誌に論文を掲載することができたので、大きな進歩があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、幼児死亡率の長期的な変化や子供の発育に着目した研究を行いたいと考えている。近年の経済発展や都市化によって、多くの途上国では、幼児死亡率が大幅に低下し、子供の栄養摂取状態は改善しつつある。しかし、国単位で見た場合の目覚ましい改善は、個人単位でみた場合とは、大きく印象が異なることが多い。経済発展の恩恵は全ての人が一様に享受できているわけではなく、都市部に住む比較的裕福な人々が大きな恩恵を享受していることは 様々な研究で示されている。その一方で、少数民族をはじめとする社会経済的弱者とされる人々の状況は、さほど改善されていない可能性が高い。経済発展がもたらした生活水準の向上は決して一様ではなく、地域ごと、社会経済的な立場、民族ごとに異質性が見られることが予想される。またコロナ感染症が与えた影響の異質性も無視することはできないと思われる。今後の研究では格差を縮小させるために、どのような政策介入が有効であり、最も必要な人々はどういった人たちなのかをデータから明らかにしていく。幼児、ならびに5歳児以下の子供の健康状態の分析することで本研究を推進していく所存である。
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