研究課題/領域番号 |
21K13809
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 一関工業高等専門学校 (2022) 広島大学 (2021) |
研究代表者 |
中川 勝國 一関工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00855455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 力学系のRuelleゼータ関数 / Gibbs測度 / エントロピースペクトル / 力学系 / マルチフラクタルスペクトル / 力学系のゼータ関数 |
研究開始時の研究の概要 |
片側シフト上のsuper-continuous関数のGibbs測度のエントロピースペクトルについて、その剛性問題、すなわち、エントロピースペクトルから元の力学系を復元する問題を、零温度極限によるアプローチで解決することを目指す。このアプローチは、位相的圧力によるスペクトルの表現から得られるRuelleゼータ関数の1-パラメータ族に対し、パラメータ(=統計力学での逆温度に相当)を正負の無限大(=零温度極限)にした時の挙動から、力学系の周期点の情報を取り出す、というものである。零温度極限によるアプローチには、Ruelleゼータ関数の多項式表示が重要であり、この表示の存在証明を課題の中心に据える。
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研究実績の概要 |
片側シフト上のsuper-continuous関数をポテンシャルとするGibbs測度を考える。令和4年度は、ポテンシャルが局所的定数関数である場合に、Gibbs測度間の測度論的同型が位相的同型に拡張できるための十分条件を与えた。この条件は、特殊なシフトに対しては研究代表者により2021年に得られており(論文として出版済)、今回はこれを一般のシフトに拡張した。さらに、この条件を用いて、局所的定数関数全体(自然に微分可能多様体とみなせる)の中で、Gibbs測度間の測度論的同型が位相的同型に一意に拡張できるようなものが、補集合がLebesgue測度0の開集合を含むことを証明した。これにより、次のことを明らかにした:位相的同型による分類を目指す剛性問題と、測度論的同型による分類を目指す剛性問題は、局所的定数関数をポテンシャルとするGibbs測度では「ほとんど」同じである。2つの剛性問題の差異は、ポテンシャルが一般のsuper-continuous関数でも考えられる。Super-continuous関数の研究は、局所的定数関数の場合の結果をたたき台として行われるため、この結果には意義がある。以上の結果をまとめた論文はDynamical Systems誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度までに、片側シフト上のsuper-continuous関数の十分大きなクラスに対して、Ruelleゼータ関数の多項式表示を導出できているが、当初の目的である多項式表示を用いた剛性問題の解決は果たせていない。局所的定数関数を扱った先行研究の手法の拡張に時間がかかっていることと、新しい異動先での仕事が多忙であったことが理由である。そこで、多項式表示を別の応用例とともに論文にしようとした。具体的には、多項式表示を用いて、Ruelleゼータ関数が有限多項式であることとポテンシャルが局所的定数関数であることの関連を調べようと考えた。しかし、こちらも予期した成果には時間がかかっている。結果的に、一編の論文を出版できたものの、本命の対象である一般のsuper-continuous関数に対する結果のプレプリント執筆・論文出版が果たせなかったため、達成度は遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は本研究課題の最終年度である。技術的難点の克服と、場合により方針の転換も視野に入れてたうえで、成果をまとめた論文の執筆に全力を挙げる。
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