研究課題
若手研究
局在スピンの集団励起であるスピン波(マグノン)は新しい情報伝送媒体の候補であり、その伝搬特性の制御は応用に向けても重要な課題である。本研究課題では、磁気スキルミオンと呼ばれるナノスケールの渦状スピン構造体が自発的に形成するスキルミオン結晶に着目し、物質に内在するナノ周期構造を利用したマグノン伝搬の新しい制御法を開拓する。
物質中の多数の電子スピンの振動によって作られる波であるマグノンは、絶縁体中でも利用可能なジュール損失のない情報伝送媒体の候補であり、低消費電力デバイスへの応用が期待されている。本研究は、スキルミオンと呼ばれる微小なスピン渦が自発的に形成する「スキルミオン結晶」を用いたマグノン特性の制御を目的としている。スキルミオン結晶を伴うキラル磁性絶縁体において、マグノンモード混成に由来するギャップ構造の観測に成功した。さらに、極性磁性絶縁体のスキルミオン結晶相において磁気共鳴ダイナミクスの観測に成功し、観測したモードの周波数分布や選択則を明らかにした。
物質中のトポロジカル欠陥の一種であるスキルミオンは、安定な粒子としての性質を持つことから磁気記録・演算のための新しい情報担体としての応用が見込まれている。電流による制御を目指す観点から、金属中でのスキルミオンのダイナミクスが盛んに研究されている。一方、絶縁体中ではマグノン制御にスキルミオンを活用できる可能性があり、本研究では、絶縁体中のスキルミオンを用いてマグノンモードを制御できることを実証し、その微視的な機構を明らかにした。これは、マグノン制御法の確立に向けた新しい切り口を与えるものと考えられ、さらにマグノン研究の舞台となりうるスキルミオン物質の開拓にも繋がることが期待される。
すべて 2023 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
Physical Review B
巻: 107 号: 2
10.1103/physrevb.107.l020410
巻: 107 号: 10 ページ: 104421-104421
10.1103/physrevb.107.104421
Nature Materials
巻: 21 号: 2 ページ: 181-187
10.1038/s41563-021-01141-w
Advanced Science
巻: 9 号: 10 ページ: 2105452-2105452
10.1002/advs.202105452
Nature Communications
巻: 13 号: 1 ページ: 1472-1472
10.1038/s41467-022-29131-9
巻: 104 号: 14 ページ: 144410-144410
10.1103/physrevb.104.144410
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-03-30-003
https://researchmap.jp/rtakagi