研究課題/領域番号 |
21K13882
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大槻 太毅 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (80780957)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 強相関電子系 / アンダーソン局在 / 光電子分光 / 1粒子スペクトル関数 / 遷移金属 |
研究開始時の研究の概要 |
物質の電気伝導性は物性物理学において最も基礎的な問題の一つである。物質中では電子同士は相関し合い、特に強い電子間反発は伝導電子を局在化させる。一方で、不純物などによる乱れも量子力学的な干渉効果を引き起こし、伝導電子を局在化させる。これらの絶縁体は電気を流さないという共通の性質を持つが1粒子励起スペクトルに大きな違いが存在し、両者が共存する系においての理解はほとんど進んでいない。そこで本研究では光電子分光法を用いて弱相関から強相関まで多体電子相関が働く系における乱れの効果を1粒子励起スペクトルの観点から明らかにし、電子相関と乱れの共存する系における電気伝導機構の構築を目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究では電子相関と乱れが共存する系において1粒子励起スペクトルの直接観測を行い、電子相関と乱れが引き起こす特徴的な電子状態を明らかにすることを目的としている。研究計画に基づき、本年度は特に次の研究成果を得た。
(1)金属絶縁体転移近傍でホッピング伝導を示すRu酸化物Ca2-xSrxRuO4について角度分解光電子分光(ARPES)と硬X線光電子分光(HAXPES)を行い、Sr置換依存性からバルク絶縁体上に表面金属状態が実現していることを明らかにした。さらにこの表面状態では明瞭なkink構造が観測され、電子格子相互作用が強くなっていることがわかった。この成果の一部は学術論文として国際誌に出版し、国際会議で発表した。 (2)励起子絶縁体Ta2NiSe5の類似物質であるTa2PdSe6においてもARPES研究を進めた。Ta2PdSe6は非常に低い抵抗率と高いゼーベック係数を持つ非常に特徴的な半金属物質である。詳細なフェルミ面と明瞭なバンド分散を観測し成功し、半金属的な電子状態が実現していることを明らかにした。また、同価数元素置換を施した混晶系においてもARPESを行い、この物質の特徴的な輸送現象と1粒子励起スペクトルとの比較を行った。本結果は日本物理学会で発表した。 (3)透明半導体In2O3はSn置換および遷移金属置換による不純物効果が期待される。そこでHAXPES及び共鳴軟X線光電子分光研究を進めた。また、層状籠状物質BaIr2Ge7は特徴的な電気抵抗率の温度依存性を示す物質であり、その振る舞いはフォノンによる温度効果と乱れによる飽和抵抗によって考察されてきた。この物質のARPESとHAXPESを行い、特にスペクトル関数の温度依存性から乱れではなく籠状構造に由来する非調和フォノンモードの電気抵抗への影響を明らかにした。この研究は学術論文として国際誌に出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は電子相関と乱れが共存する系において1粒子励起スペクトルの直接観測を行い、特徴的な電子状態を明らかにすることを目的とし研究を行っている。今年度はRu酸化物系やTa系化合物など順調に研究が進展しており、電子状態の精密解析から重要な知見が得られている。これにより、国際誌への論文作成を進めている。さらに類似物質系や組成依存性などの展開も期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、乱れと電子相関の共存する系についてスペクトル関数の決定を行う。さらに本研究テーマに密接に関係すると考えられる他の計についても積極的に電子状態観測を行い、本研究課題を進めていく予定である。
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