研究課題/領域番号 |
21K14563
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金崎 真聡 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90767336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 固体飛跡検出器 / ハフ変換 / レーザー駆動イオン加速 / 画像処理 / 機械学習 / イオン計測 / CR-39 / 粒子加速 |
研究開始時の研究の概要 |
高強度レーザーと物質の相互作用を利用したレーザー駆動イオン加速は、小型加速器開発など様々な応用が期待されている。より高エネルギーかつ高品質なイオンビーム発生のためには、加速メカニズムを解明することが重要である。本研究では、イオン検出器である固体飛跡検出器を用いて、その解析に機械学習を組み合わせることで、高精度かつ高効率なイオン計測技術を開発し、高強度レーザーによるイオン加速のメカニズム解明に貢献する。
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研究実績の概要 |
電子線やX線がイオンと同時発生するレーザー駆動イオン加速実験において、イオンのみをエッチピットとして検出可能な固体飛跡検出器は最も信頼性の高い検出器として用いられている。エッチピットの開口部形状を解析することで、入射エネルギーや核種といった入射粒子に関する詳細な情報を得ることができる。しかしながら、エッチピットの解析には膨大な時間と手間を要するため、それらを軽減する必要がある。 今年度は、量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所の高強度レーザーJ-KAREN-Pにおいて、クラスターターゲットを用いたイオン加速実験を実施した。イオン検出器として、固体飛跡検出器CR-39及びトムソンパラボラスペクトロメータを用い、結果を比較した。固体飛跡検出器の解析には、昨年度に開発した光学顕微鏡下でリアルタイムにエッチピットを認識可能なプログラムを利用し、速報性に優れた解析を実施することで、CR-39のイオン計測結果は実験方針を定める上で重要な指針として活用された。しかしながら、粒子数が少なくなる高エネルギー成分については、ノイズとの識別が困難なケースが出てきた。これを解決するためには、機械学習による分類では不十分であり、エッチピットの成長挙動を追跡する必要が出てきた。そこで、エッチング前後のエッチピットに対して、同一粒子が形成したものを検出するプログラムを開発した。今後は本プログラムの精度を向上させることにより、より詳細なエネルギースペクトルを明らかにすることが可能になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、レーザー駆動イオン加速実験が連続して実施されたため、それらに参加し、固体飛跡検出器を用いて実際にイオンの計測を実施した。実験では、水素クラスターをターゲットとし、高強度レーザーとの相互作用により加速される陽子線のエネルギースペクトル計測及び空間分布計測を行った。エネルギースペクトル計測では、固体飛跡検出器CR-39と適切な減速材を組み合わせて積層したものを用い、エッチピットが確認されたCR-39に対し、昨年度開発したプログラムを適用して、最高エネルギー等の情報を速報として報告し、実験の方針を決める際の指針として利用した。即ち、昨年度開発したプログラムにより、解析時間の短縮に成功し、固体飛跡検出器によるイオン計測の速報性が向上したと言える。 一方で、エッチピット解析用アルゴリズムの開発は、昨年度、リアルタイム性を有するプログラムを開発したため、今年度は、既に撮像されたエッチピット画像に対する画像処理プログラムの開発に取り組んだ。これについては開発途中ではあるが、エッチング前後のエッチピットを追跡し、これまでよりも手間なく短時間で成長挙動を追跡可能なプログラムを作成しており、イオンによるエッチピットと表面荒れ等によるノイズの識別が、より正確に行うことが可能となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施されたレーザー駆動イオン加速実験において、複数の解析すべき試料が得られた。その中で、エッチピットとノイズの識別が重要な課題として浮上した。レーザー加速イオンの一般的な特徴として、幅広い白色のエネルギースペクトルを有するが、高エネルギー成分ほど粒子数が少ない。しかしながら、加速されたイオンの最高エネルギーは、イオンの加速メカニズムを解明する上で重要な情報を有しており、ノイズとの差別化が必要となる。今年度の実験でも同様の状況が発生しており、機械学習によるノイズとの識別に加えて、エッチピットの成長挙動を明らかにする必要が出てきた。 エッチングと顕微鏡観察を繰り返し行う多段階エッチングでは、通常、エッチピットの成長挙動を追跡し、その飛程や感度を導出するが、ノイズとの識別にも用いることができる。しかしながら、各回のエッチング後に同じ粒子が形成したエッチピットを探す必要があり、大量のエッチピットに対して解析を実施するのは現実的ではなかった。しかしながら、今年度開発に着手したプログラムでは、画像上のエッチピットの位置を単純化することで、エッチング前後のエッチピットについて成長挙動を求めることに成功している。今後は、このプログラムを改良し、より大面積に形成されたエッチピットに対しても成長挙動を追跡可能とする。これにより、ノイズとの識別力を向上させ、より正確なエネルギースペクトルを求めることを可能にする。
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