研究課題/領域番号 |
21K14594
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 中央大学 (2022) 国立研究開発法人理化学研究所 (2021) |
研究代表者 |
橋谷田 俊 中央大学, その他部局等, 科研費研究員 (40805454)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 電磁キラリティ / 保存則 / 電磁キラリティ散逸 / 近接場光 / 禁制光 / キラリティ / 金属ナノ構造 / スネルの法則 / 偏光計測 / ナノ物質 |
研究開始時の研究の概要 |
キラル金属ナノ構造の近傍に局在するキラル近接場光のスペクトル特性を明らかにできれば,高感度キラル分光法への応用が期待できる。そこで本研究では,ナノ構造を担持する基板によって伝搬光に変換される近接場光(禁制光)のみを偏光解析・分光検出することで,キラル近接場光のスペクトルが迅速に得られる手法を開発する。本研究で開発する手法を様々な構造因子を持つナノ構造に適用することで,キラル近接場光のスペクトル特性を決めるナノ構造の物性因子を明らかにする。
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研究実績の概要 |
キラル(左右非対称)な金属ナノ構造の近傍に局在するキラルな特性を有する近接場光のスペクトル特性を明らかにできれば,キラル近接場光を用いた高感度なキラル分子分光法の開発が期待できる。本研究では,ナノ構造を担持する基板によって伝搬光に変換される近接場光(禁制光)を偏光解析・分光検出することで,キラル近接場光のスペクトルが迅速に得られる手法を開発することを目指している。本年度は、理論解析によってキラル近接場光の媒質による散逸に関する知見が得られた。具体的には、光のキラリティの度合いを表すパラメーターである電磁キラリティの保存則における電磁キラリティの散逸の式から、伝搬する円偏光および局在する円偏光(キラル近接場光)の散逸の理論式を導出することに成功した。理論式から伝搬する円偏光の散逸が媒質の複素屈折率の虚部(光吸収と関係)に依存することが明らかになった。これは、媒質による円偏光の吸収に起因する電磁キラリティの散逸であると解釈できる。一方、理論式からキラル近接場光の散逸は媒質の複素屈折率の実部(光散乱と関係)に依存するだけでなく、媒質の複素屈折率のノルムが真空と同じ1の場合には散逸が起こらないことが明らかになった。これは、媒質によるキラル近接場光の散乱(伝搬光への変換)に起因する電磁キラリティの散逸であると解釈できる。この成果から、本手法によってキラル近接場光のスペクトルが得られるという理論的な裏付けが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,キラル金属ナノ構造を担持する基板によって散乱される近接場光を偏光解析・分光検出することでキラル近接場光スペクトルを迅速に測定する手法の開発を目標としているが,その実験的な実証には至っていない。これは、本年度に研究代表者が研究機関を異動し、そこで実験研究を遂行するためのスペースを確保することが困難であったことに起因する。理論研究の進展により本研究で提案した手法の実現可能性が飛躍的に向上したため、その実験的実証は次年度に取り組むべき課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
金属ナノ構造体の近接場光検出実験を進める。研究機関の異動によって、実験研究を遂行するためのスペースが確保できる予定である。まずは散乱電磁場の厳密解が分かっている球状ナノ粒子を試料として用いて実験し,その後キラル金属ナノ構造の実験に移行する。様々な構造因子を持つキラルナノ構造を作製し,巨視的な分光測定で得られる電気(磁気)感受率,キラル感受率スペクトルと本研究で開発した装置で得られるキラル近接場光スペクトルの比較から,キラル近接場光のスペクトル特性を決めるナノ構造の物性因子を明らかにする。
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