研究課題/領域番号 |
21K14627
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西井 祐二 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70773787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | カチオン / トリプチセン / ハロゲン / 求電子置換反応 / 有機分子触媒 / 有機機能性材料 / ナノカーボン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、トリプチセン骨格によって誘起される特異な活性化メカニズムを理解し、芳香族分子に対する新機軸の化学修飾法として一般化することにある。ハロゲンの活性化に限らず、多様な求電子試薬を「高反応性カチオンとして芳香環に届ける」触媒反応系を構築することにより、従来法では実現できなかった高難度反応を達成する。この合成技術の確立は、付加価値の高い化合物群への迅速なアクセスを可能とし、新たな学問領域を開拓するための合成ツールとして活用が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、申請者が独自に発見した水車型のトリプチセン骨格を持つカチオン種について、その特異な電荷分離構造に基づく反応性に着目した。その理論的な理解を深めるとともに、新たな有機分子触媒に展開することを目指した。 2023年度では主に、ホウ素クラスターを触媒プラットフォームとした新たな触媒の構造最適化を検討した。特に、m-カルボランの炭素頂点にメチルチオ基を導入したものが、芳香族基質のハロゲン化反応において、従来のトリプチセン基盤の触媒を凌駕する結果が得られた。またホウ素クラスターの更なる化学修飾によって、触媒の電子状態を精密にチューニングできることを明らかとし、アルキル基を導入することで触媒活性と安定性の向上を達成した。新たに設計&合成した触媒について、量子化学計算を用いた構造解析を行ったところ、反応活性種のハロスルホニウム錯体におけるσホール順位が適切に調整されることが、優れた触媒活性に重要となることを明らかとした。この成果は学術論文としての投稿し、また特許出願に至っている。 このように、当初の研究対象としていた水車型の分子のみならず、より発展的なクラスター分子の性質を活かしたイオン性化学種について拡張し、より優れた機能性分子の開発を達成した。これらの発見は、有機分子触媒の設計について新たな指針を提唱するものであり、その構造と電子状態に対する理論的な理解を深められたことは学術的にも意義深いといえる。
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