研究課題/領域番号 |
21K14696
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉村 彩 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (50772696)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 二次電池 / 正極活物質 / 有機材料 / 高サイクル特性 / 重合 / 電解重合 / テトラチアフルバレン / 酸化還元 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、リチウムイオン二次電池の正極活物質として、環境負荷が小さく多彩な分子設計が可能な有機材料が注目されている。しかし、有機材料は一般に電解液に対する溶解性が高くサイクル特性が優れない。本研究では、重合点を有する酸化還元活性な分子に着目し、正極の内部で重合させ溶解性を低下させることでこの課題の解決を図る。本研究の標的分子は、サイクル特性の改善だけでなく、高容量、高エネルギー密度も示すように設計されており、将来的に高性能な二次電池用新材料の開発に繋がる。
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研究実績の概要 |
本研究では、有機正極活物質の電解液に対する溶解性の高さを改善し、高い容量、高いサイクル特性、高いエネルギー密度を同時に満たす有機分子の開発を目指している。 令和4年度は、はじめに、R3年度に合成したテトラチアフルバレン(TTF)の周辺部に4つのトリフェニルアミン部位を有する分子(4TPA-TTF)の重合機構について、SEMやNMRを用いて解析した。また、4TPA-TTFや2つのトリフェニルアミン部位で置換されたTTF誘導体(2TPA-bzTTF)が優れたレート特性を示すことを見出した。 次に、さらなる電池の高容量化を目的に、2つのPhMeNC6H4基を有するTTF誘導体(2PhMeNC6H4-bzTTF)を合成し、酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリー法により調査した。その結果、R3年度に合成した4TPA-TTFと同様に、マルチスキャンした場合に電流値の継続的な上昇が観測され、酸化還元電位測定中に電解重合が進行していることが確認できた。X線構造解析にも成功し、電極中における活物質分子の結晶構造に関する知見を得ることができた。2PhMeNC6H4-bzTTFを正極活物質とする電池の充放電特性を測定したところ、初期放電容量は127mAh/gと理論容量の73%、100サイクル後の容量維持率は35%であった。R3年度に合成した2つのトリフェニルアミン部位で置換された分子(2TPA-bzTTF)と比較すると、重合部位として働くフェニル基の存在量が少ないと電池の内部での重合が十分に進行しないために活物質が電解液に溶解していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度は、電池の高容量化を目的に、R3年度に開発した分子の構造をチューニングした2PhMeNC6H4-bzTTFに成功した。X線構造解析に成功し、電極中における活物質分子の結晶構造に関する知見を得た。また、酸化還元電位測定中に電解重合が進行していることを確認し、充放電特性のデータを得たことなど、当初の計画通り順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、当初の計画通り、より高い容量を示す有機正極活物質として、フェニルアミン部位やヘテロ環を有するTTF、ピラン、チオピランの合成に取り組む。合成に成功した分子について、酸化還元挙動を解明すると共に、それらを正極活物質とする電池を作製し充放電特性を評価する。また、それらのレドックス反応について解析する。
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