研究課題/領域番号 |
21K14716
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
引間 和浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50845617)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 全固体電池 / 液相複合化 / 硫化物固体電解質 / 電気化学的解析 / 全固体リチウム二次電池 / 高容量型正極 / 固体固体界面 |
研究開始時の研究の概要 |
究極的に安全な全固体Li二次電池は車載用途等に向けて高エネルギー密度化が求められており、負極の半分以下の容量である正極の高容量化が必須となる。申請者はこれまでに、高容量を有するLi過剰系正極が固体電解質との界面で電気化学活性を示すことを見出した。しかし、Liイオン・電子伝導性に乏しいLi過剰系正極を全固体電池に適用するためには、硫化物系固体電解質、導電助剤との複合化が必要である。そこで本研究では、核成長法などの液相複合法によりLi過剰系正極複合体を作製する。均一性を維持しLiイオン・電子伝導性を制御した正極複合体を用いて、全固体電池での高容量発現を明示することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では核成長法などの液相法により正極複合体を作製し、全固体電池での高容量の発現を目指している。2022年度は電子伝導性の低い正極活物質へ適用を見据えて、導電助剤を従来の短尺CNT(VGCF)から長尺CNTへ変更することを検討した。また、液相複合化を適用できる正極活物質材料の多様化を見据えて、Li2FeSO正極活物質に関する検討も進めた。 2021年度までの検討として、前駆体溶液中で導電助剤VGCFを添加して、正極複合体(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質/Li7P2S8I固体電解質/導電助剤VGCF)を作製することで、得られる放電容量が増加することを明らかにした。2022年度では、最適化した複合化方法を用いて、導電助剤無添加、長尺CNT 0.3 wt%添加、VGCF 0.3 wt%添加、VGCF 3 wt%添加した複合体を作製し電子伝導度を評価したところ、それぞれ1.92×10-6 S cm-1、1.48×10-2 S cm-1、2.18×10-6 S cm-1、2.31×10-2 S cm-1を示した。長尺CNTを用いた複合体では、VGCFに比べ1/10の添加量で同程度の電子伝導度が得られた。長尺CNTでは極微量でも正極層内に3D導電ネットワークが形成され、電子伝導度が大幅に向上したと考えられる。 また、2021年度にアンチペロブスカイト型Li2FeSO正極活物質が、優れた全固体電池特性を示すことを明らかにした。2022年度では優れた電池特性に寄与するメカニズムの解析を進めた。インデンテーション試験より、Li2FeSOは硫化物系固体電解質に近い弾性率を示し、硫黄を含むことに由来する優れた力学物性を有することが分かった。また、断面SEM像より、高活物質充填率(90 wt%)においても、空隙が少なく緻密体を形成していることが分かった。また、EDSマッピング像より、活物質由来のFeの周りに固体電解質由来の成分であるClやPが分布し、イオン伝導パスを形成していることが明らかとなった。以上の断面微構造が、優れた全固体電池特性に寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
均一性を維持しLiイオン・電子伝導性を制御した正極複合体により全固体電池での高容量反応の発現を目指し、以下に示す成果が得られている。そのため、これまでの研究は概ね順調に進展していると言える。 1.核成長法による正極複合体の作製と全固体電池特性 2021年度までの検討として、前駆体溶液中で導電助剤VGCFを添加して、正極複合体(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質/Li7P2S8I固体電解質/導電助剤VGCF)を作製することで、得られる放電容量が増加することを明らかにした。2022年度では、最適化した複合化方法を用いて、導電助剤無添加、長尺CNT 0.3 wt%添加、VGCF 0.3 wt%添加、VGCF 3 wt%添加した複合体を作製し電子伝導度を評価したところ、それぞれ1.92×10-6 S cm-1、1.48×10-2 S cm-1、2.18×10-6 S cm-1、2.31×10-2 S cm-1を示した。長尺CNTを用いた複合体では、VGCFに比べ1/10の添加量で同程度の電子伝導度が得られた。長尺CNTでは極微量でも正極層内に3D導電ネットワークが形成され、電子伝導度が大幅に向上したと考えられる。 2.新規Li2FeSO正極活物質の合成と解析 2021年度に、アンチペロブスカイト型Li2FeSO正極活物質が優れた全固体電池特性を示すことを明らかにした。2022年度では優れた電池特性に寄与するメカニズムの解析を進めた。インデンテーション試験より、Li2FeSOは硫化物系固体電解質に近い弾性率を示し、硫黄を含むことに由来する優れた力学物性を有することが分かった。また、断面SEM像より、高活物質充填率(90 wt%)においても、空隙が少なく緻密体を形成していることが分かった。また、EDSマッピング像より、活物質由来のFeの周りに固体電解質由来の成分であるClやPが分布し、イオン伝導パスを形成していることが明らかとなった。以上の断面微構造が、優れた全固体電池特性に寄与していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では導電助剤を従来の短尺CNT(VGCF)から長尺CNTへ変更することを検討し、長尺CNTでは極微量でも正極層内に3D導電ネットワークが形成され、電子伝導度が大幅に向上することを明らかにした。2023年度はこれまでの検討結果を活かしつつ、イオン・電子伝導パスを確保し可逆的に高容量を得るために、正極活物質や固体電解質の材料種を最適化する。正極活物質については、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質を主に検討を進めるが、電子伝導性の高いLi2RuO3やLi2FeSO正極活物質、電子伝導性の低いLiFePO4やLi2MnO3正極活物質などに検討範囲を広げる。固体電解質については、従来の検討対象であったLi7P2S8I固体電解質の代わりにLi7P3S11固体電解質などを用いることを検討する。作製した複合体は、交流インピーダンス法や直流分極試験、全固体電池試験による評価に加えて、XPSなどの分光法も活用して複合体を解析する。
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