研究課題/領域番号 |
21K14726
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
比護 拓馬 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (80778126)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 酸素キャリア材料 / ケミカルルーピング / 酸化還元反応 / 金属間化合物 / ケミカル・ルーピング / 固体触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
酸素キャリア材料(Oxygen carrier material:OC材)は保有する格子酸素放出と酸素吸蔵を介して種々の化学反応を触媒し、両反応間を循環することで連続的な化学反応システムを構築できる。従来はOC材として、ペロブスカイト型酸化物に代表される酸素不定比性酸化物が盛んに研究されてきた。しかしこれら従来型OC材は、貯蔵している酸素の大部分を高い反応速度を維持して利用できないという課題を抱えている。本研究では、従来型OC材の本質的課題を克服し得る新規OC材として「金属間化合物-酸化物複合型OC材」設計し、それらを利用した高効率な触媒・熱化学反応プロセスの実現、体系的な学理確立を目指す。
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研究実績の概要 |
新規酸素キャリア材(OC材)として「金属間化合物-酸化物複合型OC材」を設計、ケミカルループ型逆水性ガスシフト反応(RWGS-CL)へ適用しその性能について検討した。性能評価装置として熱重量測定装置および固定床流通式反応器を用い、生成物分析には四重極形質量分析計(QMS)を用いた。反応温度は400-600℃の範囲とし、OC材充填層にH2およびCO2を交互に供給、OC材の酸素吸放出性能および生成物の分析を行った。In2O3をベースに複数の遷移金属で修飾したOC材を中心に検討した。 その結果、Cu修飾またはCo修飾を施したIn2O3が、ペロブスカイト型酸化物やCe系酸化物といった既報のOC材を超える高いCO2転化速度を示すことが分かった。出口ガス分析から、転化したCO2は全てCOへと転換されており、メタン化や炭素析出といった副反応が起こっていないことが分かった。X線回折、X線吸収微細構造並びにX線光電子分光測定を用いて反応メカニズム解析を実施したところ、これらの新規OC材は反応雰囲気下で部分的に形成した金属間化合物とIn2O3界面で起こる素早い酸素イオン伝導に起因して、高いCO2転化効率を実現していることが分かった。また反応中に形成される金属間化合物の組成分析結果から、OC材調製方法を検討し金属修飾量の最適値を決定した。さらにCo修飾In2O3を用いたRWGS-CLでは、従来のRWGS反応の平衡制約を超えるCO2転化率を実現できることを見いだした。これらの結果から、新規酸素キャリア材料の設計コンセプトの有効性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱化学的CO2転換プロセス(RWGS-CL)において、本研究で提案した新規OC材を用いることで既報材料を超える性能を実現し、そのメカニズム解明が進んだ。新規OC材の作動メカニズムについて得られた知見から、更なる高性能OC材設計の指針に加えて、RWGS-CLにとどまらない酸化還元(Redox)型化学反応プロセスへの適用可能性を見いだしている。この結果は当初計画で掲げた本研究の前期目標を達成したと考えられ、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究から、H2転化反応(OC材還元反応)およびCO2転化反応(OC材酸化反応)の効率は修飾する金属によって大きく変動することが分かっており、反応メカニズムに関する知見と合わせて、両反応を効率良く進行させうるOC材の開発を行う。修飾金属種および反応条件の最適化を進め、既存のRWGSプロセスに対して優位性を持つケミカルルーピング型RWGSプロセスの提案を目指す。また低級アルカンの酸化脱水素といった反応に対して新規OC材の適用を行い、新規プロセスの提案にも着手する。
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