研究課題/領域番号 |
21K14762
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山村 凌大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (40880000)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 腸内細菌 / 口腔内細菌 / 腫瘍内細菌 / 膵がん / 新規治療法 |
研究開始時の研究の概要 |
膵がんは代表的な難治がんで、その発症機序の解明や予防・治療法の確立は喫緊の課題である。近年、腸内や口腔内、腫瘍内に棲息する細菌と膵がんの病態との関連に注目が集まっているが、実際に膵がんの発生・進展・治療応答性に影響を与える細菌種や、その詳細な分子機序は依然不明である。 そこで本研究ではこれらの解明を目指し、膵がんの進展や治療応答性と関連する腸内・口腔内・腫瘍内細菌をヒト臨床研究にて同定する。さらに、申請者らが作出に成功した世界初の膵がん遺伝子型モデルショウジョウバエおよびモデルマウスを用いて、同定したこれらの細菌が膵がんの発症や進展に影響を及ぼす機序を解明し、新規膵がん治療標的を同定する。
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研究実績の概要 |
膵がんは、有効な治療法が存在しない代表的な難治がんで、今後も罹患者数・死亡者数ともに増加し続けることが確実視されている。このことから厚生労働省は、膵がんの治療成績向上が喫緊の福祉課題であると宣言している。 この解決のためにも、膵がんの本態解明と新規治療法の開発が必要だが、最近膵がん患者では健常人と比較して腸内細菌の一種Bacteroides属が多いことなどが示された。また、膵がん患者では健常人と比較して、口腔内細菌のうちPorphyromonas属が多いこと、そして腫瘍内にも細菌叢が存在し(腫瘍内細菌叢)、膵がんの短期生存者は長期生存者と比較して腫瘍内のSaccharopolyspora属が少ないことも明らかとなった。しかし、これらの細菌叢の変動が膵がんの発症・進展・治療応答性に及ぼす影響やその詳細な機序については、未だ不明である。 そこで本研究は、膵がん患者を対象とした臨床研究で膵がんの進展や治療応答性と関連する腸内・口腔内・腫瘍内細菌種を同定し、それらが膵がんの発生や進展に影響を及ぼす分子機序を、複数の動物モデルを相補的に活用して解明することを目指す。さらに、この成果に立脚し、細菌叢改変と抗がん剤を組み合わせた膵がんの新規治療戦略の創出を目指す。 この中で我々は昨年度、北海道大学病院にて膵がん患者を対象とした臨床研究を開始し、既に30名の膵がん患者から糞便・唾液検体を採取した。また、検体の解析基盤の確立も既に完了しており、今後迅速に膵がんの進展や治療応答性と関連する腸内・口腔内・腫瘍内細菌種を同定する予定である。 さらに我々は本年度、自身らで作出した、膵がん患者の中でも最も予後不良の患者群の遺伝子型である4遺伝子変異を模倣した世界初の動物モデル・4-hitハエを活用し、既存の抗がん剤の抗腫瘍形質効果を顕著に増強する細菌代謝産物を同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵がん患者を対象とした臨床研究については、助成開始前より準備を進めてきた倫理審査申請の承認がおり、2021年11月より臨床研究を開始した。現在までに、新規膵がん患者30名からから検体を採取している。当初、臨床研究開始後2年間で膵がん患者40名から検体を採取する予定であったため、化学療法後、および切除術後の患者の追跡調査も順調に進行中である。また、我々はこれまでに、新規膵がん個体モデルを用いて膵がん形質を改善させる細菌種およびその代謝産物を同定することに成功した。これらは概ね当初の計画に沿ったものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、臨床研究で同定した、膵がんの病態に影響を及ぼす細菌種およびその代謝産物を新規膵がん個体モデルに投与し、その詳細な機序解明と膵がんの新規治療法開発に取り組む。
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