研究課題/領域番号 |
21K14776
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
豊竹 洋佑 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60843977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 酢酸菌 / リン脂質 / モノ不飽和脂肪酸 / リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素 / 酸ストレス耐性 / 酢酸発酵 / 生体膜 / 脂肪酸 / ストレス応答 |
研究開始時の研究の概要 |
酢酸発酵 (食酢醸造) は酢酸菌を利用した伝統的な発酵技術の一つであるが、その分子基盤の全容は依然として明らかにされていない。また、細胞膜脂質の観点からの研究は現象を観察するに留まり、醸造機能や発酵ストレス耐性への寄与を分子レベルで記述した報告は無いに等しい。予備検討により、膜リン脂質に含まれるモノ不飽和脂肪酸 (MUFA) の構造が酢酸菌の酢酸耐性に深く関与することが新たに示唆された。本研究では、MUFA 含有リン脂質が酢酸菌膜タンパク質の構造と機能におよぼす影響を解析し、本菌の酢酸耐性における MUFA 含有リン脂質の新奇生理機能を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
(1) Acetobacter属酢酸菌の一種であるA.pasteurianus SKU1108株に、エタノール存在下でモノ不飽和脂肪酸(MUFA)を与えると、SKU1108株はMUFAを細胞膜リン脂質に取り込む。そこで、取り込まれたMUFAが具体的にどのリン脂質分子種のアシル鎖として利用されているのかを調べた。MUFA含有エタノール培地で培養したSKU1108株から全脂質を抽出し、質量分析を用いて各リン脂質におけるアシル鎖組成を分析した。その結果、取り込まれたMUFAはカルジオリピン中に最も濃縮されていることが分かった。次に、本菌の膜結合型アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損させた酢酸発酵能欠失株を用いて上記と同様の実験を行った。その結果、どのリン脂質画分からも取り込まれたMUFAは検出されなかった。酢酸発酵能欠失株の全脂質成分からは取り込まれたMUFAが検出されていることから、酢酸発酵能欠失株では、取り込まれたMUFAがリン脂質以外の脂質成分に組み込まれていることが示唆された。 (2) SKU1108株は、膜リン脂質アシル鎖組成形成に寄与するリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)のパラログを3つ(ApPlsC1-3)有しており、ApPlsC1からApPlsC3の遺伝子欠損株の構築に取り組んだ。その結果、ApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損に成功した。ApPlsC1の遺伝子欠損株の構築には至らなかったことから、ApPlsC1は本菌の生育に必須であることが示唆された。得られたApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損株をそれぞれMUFA含有エタノール培地で培養したところ、どちらも野生株と同様に生育が促進された。このことから、これらの遺伝子は本菌のMUFA取り込みには関与しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
外部添加したMUFAの取り込み機構に関しては、MUFAが特定のリン脂質分子種に濃縮されていることを明らかにすることができた。一方、酢酸発酵条件下でカルジオリピンに濃縮されたMUFAがどのような生理機能をもつのかを明らかにするには至っていない。また、ApPlsC3の遺伝子欠損株の表現型を解析したところ、酢酸に対しては全く感受性を示さなかったのに対し、塩酸による低pHストレスに対しては強い感受性を示すことを見いだした。この発見は、ApPlsC3が酢酸菌の酸ストレス耐性に重要な役割を担うことを示すものであり、計画当初に想定した方向性とは異なるが、学術的に意義のある進展が得られたと言える。しかし、外部添加したMUFAを取り込む機構や、特定のリン脂質アシル鎖として濃縮させる機構の解明には至っていない。このような状況を踏まえると、計画当初に期待していたほどの進展は得られていないことから「やや遅れている。」と評価することが妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 取り込まれたMUFAの生理的意義に迫るための実験を行う。特に、細胞膜物性の変化に着目して研究を進める。また、上述した酢酸発酵能欠失株において、細胞膜のどの脂質画分にMUFAが取り込まれるのかを分析する。 (2) ApPlsC2とApPlsC3がどのような細胞膜脂質成分の合成に関与しているのかを調べる。また、ApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損株の表現型解析を継続して行い、これらの生理的意義を詳細に明らかにする。
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