研究課題/領域番号 |
21K14890
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
畠山 真由美 九州大学, 農学研究院, 助教 (20871437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | セルロース / キチン / 細胞培養基材 / 肝細胞 / ナノセルロース / 多糖ナノファイバー / バイオマテリアル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、樹木由来のナノ素材として注目されているセルロースナノファイバーとカニの甲羅などから得られるキチンナノファイバーを組み合わせた細胞培養基材を作製して、iPS細胞由来の肝細胞の高機能化を目指す。現在、医薬品の肝毒性評価において、ヒトから採取した肝細胞が主に使用されているが、入手機会の制限などから安定した毒性評価が困難である。一方、無限に増殖可能なiPS細胞から作製された肝細胞であれば、安定した供給源となるが、薬物代謝酵素の活性が低いといった課題がある。そこで、セルロースおよびキチンの多糖ナノファイバーを用いて細胞が生育する微小環境を制御することで、iPS細胞由来肝細胞の機能向上に挑む。
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研究実績の概要 |
現在、新規に開発される医薬品の肝毒性評価において、ヒト初代培養肝細胞が主に使用されているが、入手機会に限りがあることや、ロット差が大きいため安定した毒性評価が困難である。一方、ほぼ無限に増殖が可能なiPS細胞由来の肝細胞であれば、安定した細胞供給源となるが、薬物代謝酵素活性などの肝機能が初代培養の肝細胞と比べて低いことが課題となっている。そこで本研究では、林産系ナノ素材として注目されている樹木由来セルロースナノファイバーと水産資源のキチンナノファイバーの「固体糖鎖界面」と「ナノ繊維形状」を活かして、細胞間コミュニケーションの促進に着目した細胞培養基材を創出することで、iPS細胞由来肝細胞の機能を向上させることを目的としている。 本年度は、昨年度と同様に、ナノセルロースによる肝細胞の機能向上を目指して官能基や繊維長、結晶形の異なるさまざまなナノセルロースを使用して培養基材を作製した。作製した基材上に肝細胞のモデルとしてヒト肝ガン細胞(HepG2細胞)を播種し、肝機能に関連する遺伝子の発現解析を行った。その結果、セルロースナノファイバーを用いた基材で培養したHepG2細胞は、アルブミン遺伝子を高発現しており、培養日数を伸ばしても高い発現量を維持していた。 また、本年度は肝細胞の生育・肝機能を支えるための類洞内皮細胞のモデルとして臍帯内皮細胞の培養にも取り組んだ。セルロースやキチンのナノファイバーで作製した基材上で臍帯内皮細胞の培養を行ったところ、内皮細胞の接着を期待していたキチンナノファイバー単独の基材には、内皮細胞が接着しないことが明らかになった。化学修飾したセルロースナノファイバーと混合すると、良好な細胞接着性を示した。さらに、化学修飾セルロースナノファイバー基材上の内皮細胞は、肝細胞の生育を支える増殖因子の遺伝子を高発現している傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、ナノセルロース基材上で肝細胞を培養し、遺伝子発現挙動の解析から肝機能向上の可否について検討した。また、当初の予定通り、さまざまなナノセルロースやキチンで作製した基材を用いて内皮細胞を培養し、接着性や増殖性を確認するとともに、増殖因子の遺伝子発現量を評価することができたため、概ね順調に進展していると考えている。期待していたキチン系基材への内皮細胞の接着は困難であることが明らかになったものの、セルロース系の基材との混合により良好な接着性が確認され、さらに、化学修飾したセルロース基材上の内皮細胞では肝細胞の働きをサポートするための増殖因子の発現量が増える傾向を掴むことができた。また、次年度の研究を円滑に進めるための準備として、肝細胞と内皮細胞を共培養するための検討も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では、主に遺伝子発現挙動の解析に注力していたが、実際に肝細胞と内皮細胞間でやりとりを行うのは増殖因子(タンパク質)であるため、令和5年度ではELISAを用いて実際に細胞が分泌しているタンパク質の量に着目して検討を進める。また、フィルム状基材の上で行う2D培養だけでなく、スポンジ状の多孔質足場やゲル状足場を用いた3D培養も取り入れることで、スフェロイドサイズの制御や細胞塊内部への栄養・酸素供給の改善が期待されるため、基材形状についても検討を進めて肝機能のさらなる向上を目指す。肝細胞の働きを支える内皮細胞については、令和4年度は臍帯内皮細胞を内皮細胞のモデルとして使用していたが、令和5年度では実際の肝非実質細胞である類洞内皮細胞に変更して臍帯内皮細胞と同様の挙動を示すか確認し、肝細胞との共培養に用いる。そして、HepG2細胞からiPS細胞由来の肝細胞に切り替えて、薬物代謝酵素の活性や発現量解析などの肝機能の評価を行う。
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