研究課題/領域番号 |
21K15042
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安齋 樹 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40868824)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | RNAウイルス / 複製機構 / 細胞応答 / 宿主因子 / RNA複製複合体 / 病原性発現機構 |
研究開始時の研究の概要 |
ここ数十年、新型コロナウイルスや鳥インフルエンザといったRNAウイルスが原因となる新興感染症が世界的な問題となっている。これまでの研究において、強毒化・弱毒化といったウイルスの性状を変化させるアミノ酸変異がいくつか報告されているが、なぜ病原性が変化するのか、その分子メカニズムは不明な点が多い。本課題では、RNAウイルスの増殖に必須であるRNA複製複合体関連タンパク質に着目し、ウイルスの性状を変化させる変異がタンパク質の構造・物性・機能に及ぼす影響を包括的に明らかにすることを目的とする。これにより、RNAウイルスの病原性発現機構について、タンパク質レベルでの新たな知見が得られることが期待される。
|
研究実績の概要 |
ウイルスは、数種類のタンパク質と核酸からなる微小な構造体であるが、近年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックや家禽における鳥インフルエンザウイルスの流行など、人間社会にとって深刻な影響をもたらすこともある。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスは、RNAをゲノムとして有するRNAウイルスであり、宿主の細胞で増殖するために、自身のゲノムにコードされたRNA複製複合体(RdRp)関連タンパク質に加えて、宿主由来のタンパク質及び宿主の細胞機構を利用する。つまり、RNAウイルスの増殖機構を理解するためには、RdRp関連タンパク質だけでなく宿主タンパク質・細胞機構との相互作用にも視野を拡げる必要があるが、分子レベルでの知見は乏しいのが現状である。そこで本課題では、ウイルスの性状および増殖に関与する、RdRp関連タンパク質を中心とした宿主タンパク質・細胞機構との相互作用を明らかにすることを目的とした。 本年度は、(1)インフルエンザウイルスの温度感受性を規定するRdRp関連タンパク質の構造・物性、及び、(2)SARS-CoV-2の増殖に関与する宿主タンパク質・細胞機構の2点に着目して研究を進めた。(1)については、37度から25度まで段階的に培養温度を低下させながら、インフルエンザウイルスを30代以上連続で継代し、低温でのみ増殖能を有するインフルエンザウイルスの変異株の取得を行った。(2)については、SARS-CoV-2粒子の質量分析により同定した宿主タンパク質について、RNAi法によるウイルス増殖への影響を評価した。その結果、SARS-CoV-2増殖に関与する宿主タンパク質を同定することができた。現在、ウイルス増殖における同定した宿主タンパク質の機能について詳細な解析を進めており、得られる知見は、SARS-CoV-2と宿主の相互作用の理解に繋がると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、インフルエンザウイルスの低温馴化株の取得、及び、SARS-CoV-2の増殖に関わる宿主タンパク質の同定に成功した。低温馴化株のRdRp関連タンパク質が有するアミノ酸変異の解析は、温度感受性というウイルス性状を規定するウイルスタンパク質の構造・物性の解明へと繋げることが可能であり、SARS-CoV-2増殖における同定した宿主タンパク質の機能の解明を進めることで、ウイルス増殖におけるウイルスと宿主の相互作用の理解に繋がる。よって、おおむね順調に進展していると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
インフルエンザウイルスの低温馴化株については、ゲノムのシーケンスを行い、導入されたアミノ酸変異の同定を進める。SARS-CoV-2増殖に関わる宿主タンパク質については、ウイルス増殖のどのステップに関与するのか、感染細胞内においてウイルスタンパク質とどのように相互作用するのかについて詳細な解析を進める。
|