研究課題
若手研究
生殖系列における生殖細胞特異的遺伝子の発現獲得とそれに伴うゲノム広範囲なエピゲノム変化は、機能的な配偶子の産生に必須である。申請者はこれまでに、生物進化の過程で宿主ゲノムに感染した内在性レトロウイルス (ERVs) が減数分裂期特異的に種特異的な転写活性調節を担うエンハンサーとして機能することを見出した。しかしながら、このERVsエンハンサーの構築を可能にする制御機構については未解明であるため、ERVsエンハンサー上に特異的に結合するクロマチン抑制因子と活性化因子の機能ならびに相互作用因子に着目し、ERVsを介した生殖系列特異的な遺伝子発現制御機構を明らかにする。
生物進化の過程でゲノム中に組み込まれた特定の内在性レトロウイルス (ERVs) は、精子形成過程において減数分裂期特異的に種特異的な転写活性調節を担うエンハンサーとして機能する。本課題では特にエピゲノム制御因子に着目し、マウス精子形成過程におけるERVsエンハンサーの活性調節機構を検証した。その結果、精原細胞期ではクロマチン抑制因子であるKRAB-ZFPによりERVsエンハンサーは抑制され、減数分裂への移行とともに精子形成のマスター転写制御因子であるA-MYBによって活性化されることを明らかにした。
一般的にERVsは、転移活性による変異原性のために体細胞系列では抑制的エピゲノム修飾によって強固に抑制されている。本研究の遂行によって、精子形成過程においてはKRAB-ZFPならびにA-MYBの発現を介した宿主の緻密な制御機構によって、特定のERVsは種特異的な転写活性調節を担う減数分裂期特異的なエンハンサーとしての役割を担うことが明らかになった。現在まで、多様な生物種の精子形成過程において種特異的な遺伝子が多く発現し、受精時における異種間の交雑を防ぐことが報告されているが、本課題によって明らかにしたERVエンハンサーとその制御機構は、この精子形成特有の転写制御機構の理解に貢献する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件)
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