研究課題/領域番号 |
21K15138
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
善方 文太郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (90758541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 神経筋接合部 / アセチルコリン受容体 / ゼブラフィッシュ / 筋収縮 / 運動機能 / 骨格筋 / イオンチャネル / カルシウム透過性 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格筋は速筋と遅筋から構成され、これらの収縮は運動神経によって制御される。従って、筋において運動神経の指令を受容するイオンチャネル型アセチルコリン受容体(AChR)は極めて重要である。近年、ゼブラフィッシュから遅筋特異的に発現する新規型AChRが発見された。本研究ではこの新規型AChRの機能を明らかにし、遅筋制御にどのように寄与するかを解明する。発現系を用いた電流解析により新規型AChRの特徴を解明し、さらに新規型AChRの特徴を遺伝子改変により喪失させたゼブラフィッシュを作製し、遅筋の活動と個体の運動機能に生じる影響を解析する。これによりAChRの新たな性質と筋収縮の仕組みの理解に繋げる。
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研究実績の概要 |
脊椎動物の運動機能の制御においては骨格筋と運動神経のシナプス部である神経筋接合部が極めて重要な役割を担う。これまでにゼブラフィッシュの遅筋において従来知られていたものとは異なる分子構成のアセチルコリン受容体が発見された。遅筋が既知のモデルとは異なるメカニズムで収縮する可能性が考えられるが、この新規アセチルコリン受容体の機能には未解明な点が多く残されている。本研究はこの新規アセチルコリン受容体の機能を解析し、遅筋の収縮メカニズムを解明することを目的とする。 昨年度までに申請者は遅筋のアセチルコリン受容体が既知の受容体に比べて高いカルシウム透過性を示すことを明らかにし、その生理学的意義を解明するため、遺伝子改変によって遅筋のアセチルコリン受容体のカルシウム透過性を喪失させたトランスジェニックゼブラフィッシュを作製した。さらに、内在性のアセチルコリン受容体の影響を除くため、筋型アセチルコリン受容体を完全に喪失した変異系統(sofa potato)と交配し、変異型アセチルコリン受容体の機能のみをクリアに解析できる条件を整えて実験を行った。 この遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて運動機能解析を行ったところ、カルシウム透過性を失った系統では遊泳行動時の身体の屈曲の角度が小さく、さらに遊泳速度も遅くなるなど、運動機能の有意な低下が認められた。このことから遅筋のアセチルコリン受容体を介したカルシウムイオンの流入が遅筋の収縮メカニズムにおいて重要な役割を担うことが示唆された。ここまでの結果に関して日本生理学会大会および日本動物学会大会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、これまでに遅筋のアセチルコリン受容体の特徴について解析を進め、その結果高いカルシウム透過性を示すことを明らかにした。さらにこのカルシウム透過性が生理学的にどのような意義をもつのかをin vivoの系で解析するため、遅筋のカルシウム透過性を喪失させた遺伝子改変ゼブラフィッシュ系統の作製に成功した。この遺伝子改変系統を用いて運動機能の解析まで行った。内在性のアセチルコリン受容体の影響を排除するため、筋型アセチルコリン受容体を喪失した変異系統と掛け合わせる時間を要したため、当初計画していたカルシウムイメージングによる骨格筋の細胞レベルでの活動の解析に関しては実行にいたっておらず、現在条件検討を含めた予備実験に入った状況である。
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今後の研究の推進方策 |
遅筋のカルシウム透過性を喪失させた遺伝子改変系統を使用し、引き続き詳細な運動機能解析を行う。また、この改変系統の遅筋の活動にどのような影響が生じているか、カルシウムイメージングによって細胞の活動を解析する。これによってアセチルコリン受容体を介した直接的なカルシウムイオンの流入が筋収縮においてどのような役割を担っているかを明らかにする。
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