研究課題/領域番号 |
21K15154
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 宮崎国際大学 |
研究代表者 |
田川 一希 宮崎国際大学, 教育学部, 講師 (90830399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 植物の運動 / 誘導防御 / 花食者 / 食虫植物 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの植物は、動物と比較してゆっくりとしたスピードで運動をする。しかし、例外的に、接触刺激に応じた素早い動きを示す植物も存在する。素早い運動にはコストが伴うため、何かしらの利益が存在すると考えられるが、なぜ動くのかは未だに謎のままである。本研究では、申請者が2018年に発見した、モウセンゴケ属の接触刺激に応じた素早い花の閉鎖運動について、その生態学的意義を明らかにする。具体的には、この閉鎖運動がモウセンゴケ属の花を食べるガであるモウセンゴケトリバの幼虫に対する誘導防御として効果的である、という仮説を、野外観察と実験を通して検証する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、トウカイコモウセンゴケを材料として、素早い花閉鎖による防御の効果を定量化した。まず、花閉鎖を制御する方法を確立した。申請当初はジエチルエーテルを用いた麻酔による制御を考えていたが、予備実験の結果、麻酔の効果が安定しないことや植食者の行動に異常が見られることが明らかとなった。様々な手法について試行錯誤を行った結果、レジンを用いて花弁を接着し物理的に閉鎖を妨げる方法が最適であると判断した。レジンを用いて閉鎖を妨げた花とコントロールの花を植食者であるモウセンゴケトリバに提示し、繁殖器官の食害率を比較した。その結果、閉鎖を妨げた花の胚珠の食害率は、コントロールと比較して統計学的に有意に高くなった。一方、花閉鎖は花弁の食害を促進し、雄しべ・雌しべの食害には影響を与えなかった。花弁・雄しべ・雌しべの食害は、種子数に対して統計学的に有意な影響を及ぼさなかったことを踏まえ、胚珠の食害抑制につながる花閉鎖は、トウカイコモウセンゴケの繁殖成功に総合的にポジティブな影響を及ぼすと結論づけた。さらに、画像解析によって、モウセンゴケトリバの食害に応答した花閉鎖、ピンセットによる物理的刺激に応答した花閉鎖、概日時計に制御された花閉鎖のスピードを比較した。その結果、食害に応答した花は、概日時計による花の9倍のスピードで閉鎖することが分かった。以上の内容をまとめ、Biology Letters誌に原著論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では(1)花閉鎖が植食者による繁殖器官の食害を抑制する効果を定量化すること、(2)国内外で食害レベルと花閉鎖形質の相関を明らかにすることを目指している。2021年度は新型コロナウイルス感染拡大による出張禁止等の影響で、サンプリングと実験を予定通り行うことができなかった。2022年度は状況が好転し、岡山県・沖縄県で複数回サンプリングを実施することが可能となった。また、花の閉鎖を制御する手法を確立し(1)の実験系を整えた。その結果、十分な個体数のトウカイコモウセンゴケとモウセンゴケトリバを用いて実験を行うことができた。一方(2)については、国内の生息地で予備的な調査を行うに留まった。以上を踏まえ「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き本務校の教務都合で、長期間の出張は難しいことが想定される。そのため、短期間でサンプリングを行い、実験室で検証を行うことをメインの手法として研究活動を継続させる。2023年度は、国内の複数箇所(5箇所を目標とする)でトウカイコモウセンゴケ・コモウセンゴケを採集し、実験室条件下で花閉鎖形質・花閉鎖による防御効果を比較する予定である。それを通して、モウセンゴケトリバの食害レベルの高さと花閉鎖の誘導されやすさの間に正の相関が見られるかを検証する。また、植物個体の形質(果実数、蕾数、受粉の有無等)と花閉鎖形質の関連性についての解析も行う。
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