研究課題/領域番号 |
21K15457
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小出 りえ 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (40846325)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 内在性RNAウイルス / 抗ウイルス免疫 / 哺乳類 / PIWI-interacting RNA / CRISPR-Cas |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類のゲノムには、内在性ウイルス様エレメント(EVE)と呼ばれるウイルス由来配列が多数存在する。近年、EVEが近縁ウイルスに相補的なPIWI-interacting RNA(piRNA)を産生することがわかってきた。piRNAはPIWIタンパク質と結合し、標的mRNAの発現を配列特異的に制御する小分子RNAである。この機能から、EVE由来のpiRNAがRNA干渉によって近縁ウイルスの感染を抑制する可能性を着想した。本研究では、RNAウイルス由来配列から産生されるpiRNAが哺乳類で近縁ウイルスに対する抵抗性因子として機能するかどうかを検証する。
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研究実績の概要 |
1. PIWI-piRNA経路ノックアウトがBoDV感染に及ぼす影響 RNA切断活性に重要とされるPIWIドメインの一部を欠損したMili conditional KO(Mili cKO)マウスのコロニーを樹立し、これらのマウスの海馬から作製した神経前駆細胞(NPC)を用いてsmall RNA-seqを行った。その結果、Mili cKOマウスと野生型マウスのNPCにおいて、リード数やシーケンス長、シーケンスバイアスの差は殆ど認められず、NPCにおけるpiRNAの発現も精巣と比較すると非常に低かった。そこでBoDV感染に対するPIWI-piRNA経路の影響をより正確に評価できるin vitro実験系として、精子幹細胞を用いた新たな実験系を検討した。現在、野生型およびMili KOマウス由来の精子幹細胞を用いてBoDVの感染実験を進めている。
2. EBLN由来piRNAによる抗ウイルス機構の解析 先行研究からEBLN由来piRNAがNPCにおいてBoDVのmRNAをサイレンシングする可能性を着想したが、small RNA-seq解析の結果、NPCにおけるEBLN由来piRNAの発現は確認できなかった。一方、精巣由来の小分子RNAは、piRNAの特徴である1Uバイアスを示し、piRNAクラスターの内部もしくは近傍に存在するEBLN3, 4, 5全てにマップされた。また、BoDV N遺伝子の配列をpiRNAクラスターにノックインしたBoDV-N KIマウスの精巣において、小分子RNAがpiRNAクラスター内のBoDV-N配列にマップされることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はNPCをモデルにBoDVの感染実験を行う予定だったが、NPCからEBLN由来piRNAを検出できず、EBLN由来piRNAを高度に発現する精巣を用いた実験系に切り替えることとなった。当初の研究計画から一部変更せざるを得なかったが、現在精子幹細胞や精巣器官培養系を用いたBoDVの感染実験など、仮説の検証に必要な実験を着実に進めており、今後の研究進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を踏まえ、今後は以下の実験を遂行する。 1. PIWI-piRNA経路ノックアウトがBoDV感染に及ぼす影響 野生型およびMili KOマウス由来の精子幹細胞においてBoDVの感染性の比較を行い、Miliの欠損がBoDV感染に与える影響を調べる。また、in vivoにおけるBoDVの感染実験も並行して進め、異なる遺伝型のマウスにおいてBoDVの感染性や病原性を評価する。BoDVに感染した精子幹細胞および精巣からマウスPIWIを免疫沈降し、結合したpiRNAをsmall RNA-seqによって解析する。
2. EBLN由来piRNAによる抗ウイルス機構の解析 EBLN由来piRNAが精巣においてBoDV感染を抑制するかを調べるため、in vivoにおけるBoDVの精巣内接種とex vivo精巣器官培養系を用いたBoDVの感染実験を行う。BoDVに感染した精巣から抗BoDV piRNAの検出を行い、EBLN由来piRNAがBoDVに対する抵抗性因子として機能するかどうかを明らかにする。
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