研究課題
若手研究
近年、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連の頭頸部癌が増加しており、特に中咽頭癌で顕著である。HPV陽性の中咽頭癌は放射線治療の感受性が良好で予後良好と考えられている。しかし、このメカニズムについては未解明の部分が多い。先行研究で中咽頭癌の放射線治療患者の治療前生検標本において、p16発現に加えてPD-L1とCD8が高発現である患者群が予後良好であることを解明した。それらの成果を発展させ、他の頭頸部癌でも腫瘍免疫関連蛋白の発現と放射線治療成績の相関を解明すると共に、これらの結果を臨床応用に結びつけることが本研究の概要である。
頭頸部癌を対象にして (A) 治療開始前の生検検体を用いた腫瘍免疫関連蛋白の免疫組織染色による放射線治療効果予測、(B) 口腔癌の術前化学放射線治療前の生検標本と手術標本を用いた腫瘍免疫関連蛋白の発現と局在の放射線治療前後の変化の検討、(C) 腫瘍免疫の制御に関わる放射線治療患者の血中マイクロRNAの同定を行い、癌細胞の腫瘍免疫関連蛋白を用いた放射線感受性予測法の臨床応用と個別化放射線治療の実用化を目指す研究を行っている。令和3年度は(A) 中咽頭癌をはじめとする頭頸部癌において、腫瘍免疫関連蛋白発現と放射線治療効果の相関を明らかにする。(B) 口腔癌における術前化学放射線治療前の生検標本と手術標本を用いてCD8やPD-L1、FoxP3などの発現や局在の変化と治療成績の関係について検討を行う。(C) 腫瘍免疫関連蛋白の評価とともに、放射線治療前後の組織検体を用いての発現変化や、PD-L1発現調節に関わるマイクロRNAの同定を目指し研究を行ってきた。令和4年度では前年度の研究を継続するとともに、有用な治療効果予測指標の組み合わせが見つかった場合には、北海道内の連携病院から症例集積を行って症例数を増やし、同様の結果が得られるか検証作業を行う予定としており、おおむねその目標が達成できたと考えている。令和5年度では得られた結果の統計解析を行い、今後論文化を行う予定としている。頭頸部癌の放射線治療効果が予測できるようになれば、個々の腫瘍免疫能に適合した個別化した放射線治療が可能となり、放射線治療成績の向上が期待される。また、今後の免疫療法を併用した放射線治療の臨床応用に向けて有用な知見となることが期待できると考えている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件)
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