研究課題/領域番号 |
21K16180
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 信彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80572552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 近位尿細管 / 糖新生 / ホルモン調節 / インスリン / グルカゴン / SGLT2阻害薬 / 副甲状腺ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
近年、生体エネルギー代謝の調節という視点で糖尿病の病態と治療が見直され、肝臓に次ぐ糖産生臓器でもある腎近位尿細管(PT)が注目され、その調節経路の解明は糖尿病治療の新たな標的となる可能性を秘めている。本研究では、肝糖新生に対して真逆の作用を有するインクレチン関連薬とSGLT2阻害薬に共通する臓器保護効果の背景にPT糖新生が関与するという仮説の下、両薬剤の共通因子であるグルカゴンによるPT糖新生調節機構と、SGLT2阻害薬と酸塩基平衡がPT糖新生に及ぼす影響について、申請者らの得意とする腎尿細管生理機能解析の手法を用いて解明するものである。
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研究実績の概要 |
腎近位尿細管の糖新生におけるグルカゴンの役割 腎近位尿細管の糖新生におけるグルカゴンの役割は、受容体の存在から病態生理学的意義まで不明な点が多く、ラット単離近位尿細管を用いたex vivo実験系で糖新生酵素mRNAに及ぼす影響を測定したところ、コントロールと比較してPEPCK(phosphoenolpyruvate carboxykinase)とG6Pase(glucose 6-phosphatase)それぞれで2~3倍の有意なmRNA発現増加が観察された。近位尿細管におけるグルカゴンの作用(vivo)には、肝臓で生成されるcAMPが関与するという説とは対照的に、単離尿細管を用いたex vivoの系では、直接的な作用が確認された。病態生理的意義の観点から、まず、SGLT2阻害剤投与による反応性グルカゴン上昇と腎保護作用に着目し、近位尿細管に対するSGLT2阻害剤の作用について検討した。SGLT2阻害剤の効果を検討する中で、直接作用する受容体の存在は不明だが、生理作用が観察されるという点でグルカゴンと共通するアルドステロンが、ミネラルコルチコイド受容体(MR)を介して近位尿細管Na輸送を亢進し、SGLT2阻害薬によって抑制されることを明らかにした。また、片側腎摘出+高塩分食事+浸透圧ポンプによるアルドステロン持続投与により作成したDKD(diabetic kidney disease)ラットを用いた検討により、MRブロッカーで見られる高カリウム血症をSGLT2阻害剤が抑制し、近位尿細管カリウム輸送体TWIK1(管腔側)とTASK2(基底側)がその作用に関与していることを明らかにし、これらの知見を国際会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間において新型コロナウイルス感染症の流行が拡大し、断続的に高度な大学の活動制限が実施され、所属する感染制御部門の業務量が増加したため、予定していた実験の一部を実施した。しかしながら、この状況においてもグルカゴンが単離近位尿細管に直接作用を及ぼす可能性を示唆する知見や、アルドステロンがミネラルコルチコイド受容体(MR)を介して近位尿細管Na輸送を亢進し、SGLT2阻害薬によって抑制されることを明らかにするなど、今後の本研究の発展において重要なデータを得られている。
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今後の研究の推進方策 |
OLTEFラットに高塩分食、片腎摘出、アルドステロン持続投与(皮下ポンプ)を組み合わせてDKD/DMNモデルとLETO(高塩分食、片腎摘出)を対象に、GLP1受容体、グルカゴン受容体などの発現や、SGLT2阻害薬への反応を検討する。
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