研究課題
若手研究
化膿性汗腺炎は、腋窩や鼠径部、臀部などに皮下硬結や瘻孔を多発し、組織破壊的に線維化の強い瘢痕へ進行する慢性に経過する炎症性皮膚疾患である。現在では乾癬等と同様に自己炎症性疾患と考えられているがその病態は明らかではない。沖縄県は化膿性汗腺炎の発症が国内では例外的に多い地域であり、琉球大学皮膚科では重症 例に対する外科手術を多数行ってきた。本課題では、化膿性汗腺炎と他の好中球性皮膚症との病態の異同を明らかにし、線維化因子の発現細胞の同定や、随伴する激しい疼痛の原因を決定し、治療標的となる蛋白の同定を目標とする。
病変部のトランスクリプトーム解析の結果、化膿性汗腺炎では、健常コントロールや他疾患と比較してCTGFやCOL1A1、COL3A1、COL14A1、ELNなどの遺伝子が高発現しており独特の遺伝子発現がみられた。またB細胞の一群であるMZB1細胞に関連する遺伝子の高発現がみられた。化膿性汗腺炎病変部の免疫染色ではMZB1陽性細胞が多く見られ、CTGFとも共染された。健常線維芽細胞にCTGFを添加したところ、添加濃度に応じてCOL1A1などの遺伝子の高発現がみられた。以上より、化膿性汗腺ではB細胞の一群であるMZB1細胞がCTGFを産生することで病変部の線維化をきたしていることが明らかになった。
化膿性汗腺炎は欧米では多くみられるが、東アジアでは比較的まれな疾患である。しかし、沖縄県はアジアの中では例外的に患者が多い地域であり、さらに性差などの臨床的な特徴も欧米と異なることがわかっている。遺伝的背景をもとに、病態が人種によって異なることが予想され、本研究を発信することは、治療法の開発も含め意義があり患者に還元できる可能性が高いと考える。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
Visual Dermatology
巻: 21 ページ: 551-555
Derma
巻: 324 ページ: 1-8
皮膚病診療
巻: 43 ページ: 390-396
日本皮膚科学会雑誌
巻: 131 ページ: 1-28
130007971392
Journal of Cutaneous Immunology and Allergy
巻: 4 号: 5 ページ: 146-148
10.1002/cia2.12187