研究課題/領域番号 |
21K16291
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
酒井 亮太 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80727529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 半月体形成性糸球体腎炎 / 組織制御性T細胞 / GATA3 / IL-33 / IL-2 / TCR / 制御性T細胞 / LacZ / 腎炎 / 足細胞 / 血管内皮細胞 / 線維芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
筆者は腎臓に存在する組織制御性T細胞(組織Treg)と呼ばれるTregに着目し、特に腎炎回復期に出現するGATA3陽性Tregがどのように腎固有細胞(線維芽細胞や血管内皮細胞、足細胞など)に作用して、過剰な炎症と線維化を収束に導き、修復に寄与するのか、その具体的機序を明らかにしたい。本研究は、腎炎マウスモデルから分離したGATA3陽性Tregがどのように寛容維持に寄与し、過剰な線維化を抑制するのかを明らかにして、腎炎の炎症収束・組織修復および再生機構を解明し、慢性腎不全を防ぐ治療応用を目的とする研究である。
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研究実績の概要 |
腎炎回復期に出現するGATA3陽性組織制御性T細胞(Treg)の特徴の把握するために蛍光試薬SPiDER-βGal(株式会社同仁化学研究所)を用いて、1細胞レベルでの解析を目指した。しかし、フローサイトメトリー解析ではConventional T細胞でGATA3陽性のうち、β-galactosidase陽性細胞は約60%に、さらにGATA3陽性Tregのうちβ-galactosidase陽性細胞は約10-20%にとどまった。また組織解析でも自家蛍光との区別が困難で、明確にGATA3陽性Tregを区別できないと判断した。従って、GATA3陽性Tregのbulkもしくはsingle cell RNA-seq解析は施行できなかった。 このため、まずin vitroでのGATA3陽性Tregの誘導を試みた。脾臓から単離したTregはCD3/CD28刺激なしでIL-2およびIL-33によりGATA3が強く発現することを明らかにした。Foxp3を発現しないConventional T細胞をIL-4およびIL-2のいわゆるTh2条件でTCR刺激をしたところ、TCR刺激を減らしていくと段階的にGATA3の発現は減少した一方で、TregにおいてはConventional T細胞の増殖に必要な程度のTCR刺激を加えたものは逆にGATA3の発現が抑制され、Foxp3を失ったexTregが増加した。しかし、TCR刺激を段階的に減らしていくとある程度の「強すぎないTCR刺激」ではexTregは増加せず、TCR刺激無しと比較してGATA3陽性Tregが増加することを明らかにした。 腎固有細胞としてHatje FA, et al. J Am Soc Nephrol. 2021に従い、メサンギウム細胞、血管内皮細胞、足細胞のソーティングし、発現遺伝子についてRT-PCRで確認した。各々細胞培養が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までにGATA3- lacZトランスジェニックマウス(C57BL6♀×DBA2♂の交雑種であるBDF1背景)とFoxp3-IRES-hCD2-CD52ノックインマウス(C57BL6背景)をかけ合わせ、戻し交配したマウスを利用し、蛍光試薬SPiDER-βGal(株式会社同仁化学研究所)を用いることでGATA3陽性Tregを生細胞のまま解析するために様々な条件検討を繰り返した。しかしながら、フローサイトメトリー解析ではConventional T細胞でGATA3陽性染色のうち、β-galactosidase陽性細胞は約60%にとどまった。さらにGATA3陽性Tregのうちβ-galactosidase陽性細胞は約10-20%にとどまった。また組織解析でも自家蛍光との区別が困難であり、SPiDER-βGal染色では明確にGATA3陽性Tregを区別することは困難と判断した。しかし、腎臓の糸球体固有の細胞である、メサンギウム細胞、足細胞、血管内皮細胞の1細胞レベルでの解析手法はSony SH800を用いて抽出が可能になり、in vitroでの細胞培養が可能になった点は評価できる。そして、in vitroでのTCR刺激を用いた実験の結果、GATA3陽性Tregが通常の刺激ではなく、強すぎない刺激によって活性化される可能性があり、抗原提示細胞ではなく、MHCクラス分子を有する臓器固有の細胞によって刺激される仮説を得ることができたが、この証明には様々な条件検討が必要であること、当初のGATA3陽性Tregの遺伝子プロファイルの把握ができなかったことから、計画はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Tregは、免疫系の末梢寛容と組織の恒常性に重要な役割を果たすことが多数報告されている。しかし、この臓器特異的組織Tregがどのように免疫寛容を誘導し、組織修復に寄与するのか、未だ不明な点が多く、今後の解明が期待されていた。本研究では、臓器局所で免疫制御や組織修復に寄与するとされるTregにおけるGATA3発現に寄与する因子に焦点を当てることにした。Conventional T細胞と異なり、強すぎないTCR刺激とIL-2並びにIL-33がTregのおけるGATA3発現が組織局所において重要である可能性が指摘された。この「強すぎない刺激」がどの細胞から来るのか、特に臓器固有に存在するメサンギウム細胞や足細胞にはMHC分子を発現するため、これらの抗原提示能をもつ細胞に焦点を当てる。脾臓やリンパ節などの2次リンパ組織から抽出したTregとそれらの細胞との共培養システムでGATA3発現の強度を調べ、腎炎回復期に出現するGATA3陽性組織制御性T細胞(Treg)がどのように寛容維持に寄与し、過剰な線維化を抑制するのかを明らかにしたい。そして腎炎の炎症収束・組織修復および再生機構を解明し、慢性腎不全を防ぐ治療応用を目指したい。
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