研究課題
若手研究
胸腺腫は胸腺細胞に由来する腫瘍で、重症筋無力症、赤芽球癆といった多彩な自己免疫疾患を高頻度に合併するが、その免疫異常の原因は明らかではない。研究代表者は、後天性赤芽球癆を合併した胸腺腫症例のT細胞、特にCD8陽性T細胞にSTAT3遺伝子体細胞変異を認めることを報告しているが、STAT3以外の遺伝子変異については不明である。本研究では、胸腺腫症例でCD8陽性T細胞とCD4陽性T細胞の網羅的遺伝子解析を行い、T細胞の遺伝子変異を調べる。T細胞の遺伝子変異と胸腺腫および合併する自己免疫疾患の臨床像との関連性を検討し、胸腺腫による免疫異常の病態を明らかにすることを目指す。
以前の我々の研究結果をもとにして解析する遺伝子を絞りこみ、最終的に52遺伝子を対象とした遺伝子変異解析を行った。胸腺腫や関連する自己免疫疾患患者、のべ132人の血液から抽出したDNAを用いた。結果、クローン性造血(血液がんに関わる遺伝子変異が健常人にもみられる現象)に関わる遺伝子の変異が高頻度に認められた。クローン性造血関連遺伝子の変異をもつ患者では治療後に再発しやすい傾向がみられた。また、それらの変異遺伝子の中には、時間経過とともに変異が消失したり、逆に新たな変異を獲得するものがあり、難治化に関連していると考えられた。
今回、我々は胸腺腫と、合併する自己免疫疾患、主に赤芽球癆における遺伝子変異の詳細を明らかにした。クローン性造血は血液がんのみならず、心血管疾患、再生不良性貧血などとも関連があるとされるが、胸腺腫や赤芽球癆でも関連があることが示唆された。また、一部のクローン性造血関連遺伝子の変異は患者の治療抵抗性に関連していたが、これらの遺伝子が胸腺腫や、関連する自己免疫疾患の新たな治療標的の候補となる可能性も考えられた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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