研究課題
若手研究
IPMN(膵管内乳頭状粘液性腫瘍)は膵嚢胞性腫瘍の一つで、膵癌の前駆病変であることが知られているが、その悪性化の機序については解明されていない。KRAS、GNAS、RNF43といった遺伝子変異がIPMNで高頻度にみられることから、これらはIPMNの発生に重要な遺伝子と考えられている。今回、我々はこれらの遺伝子変異をマウス由来膵オルガノイドに導入し、IPMN膵オルガノイドとそれを用いたsyngenic modelによって新たなIPMN疾患モデルを確立し、更に、網羅的遺伝子スクリーニングであるCRISPR Screeningによって、IPMN膵オルガノイドモデルの悪性化責任遺伝子を同定する。
本研究は膵癌の前癌病変であるIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の悪性化の過程を分子生物学的に明らかにすることが目的である。IPMNオルガノイドの樹立手技確立のために、ヒト膵癌手術検体を用いた膵癌オルガノイドを作成し実際の組織標本と比較した。膵癌オルガノイドはprimary tumorの形態学的特徴が保持されていた。膵癌オルガノイドの分化度が高いほど微小環境因子へ強く依存しており、分化度の特徴である管腔構造形成には微小環境因子が必須であった。IPMNオルガノイドの樹立には至っていないが、樹立に必要な微小環境因子を同定予定であり、腫瘍免疫微小環境中の免疫細胞のクラスタリング手技を確立した。
膵癌の前癌病変と考えられるIPMNは低悪性度腫瘍であるため、2D培養では維持が困難である。3D培養による擬性構造体であるオルガノイドは、膵癌オルガノイドと実際の組織標本と比較することで分化度に応じた形態学的特徴が維持されることがわかった。分化度が高いほど周囲の微小環境因子に依存していたため、IPMNオルガノイドの樹立・維持には微小環境因子の評価が必要であることが示唆された。微小環境因子はCAFが供給していると考えられ、IPMNオルガノイドと腫瘍微小環境におけるCAFとの関係を解明することは、IPMNの悪性化機序の解明につながると期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
Clinical and Translational Medicine
巻: 13 号: 1
10.1002/ctm2.1181
Journal of Experimental Clinical Cancer Research
巻: 41 号: 1 ページ: 89-89
10.1186/s13046-022-02301-9