研究課題
若手研究
非小細胞肺癌に対する新規治療戦略として癌幹細胞は有望な治療標的であり、そのために新たな癌幹細胞マーカーを発見することは極めて重要である。LY6Dは、肺癌を含む様々な癌腫において過剰発現していることが知られているが、その意義は不明である。本研究では、in vitroとin vivoの実験によってLY6Dの癌幹細胞マーカーとしての意義と機能を検証するとともに、LY6Dが制御する幹細胞性維持に関わるシグナルを網羅的に解析・同定する。本研究は、これまで不明であった癌におけるLY6D発現の意義を明らかにし、癌幹細胞をターゲットとした非小細胞肺癌の新たな治療戦略の開発に寄与する。
原発性肺癌手術検体においてLY6Dの発現を免疫組織学的に評価し、術後再発予後との相関を解析した結果、LY6Dが強く発現している症例は有意に術後無再発生存期間が短縮していることを発見した。RNA-seqデータベースの解析から、LY6Dを高発現している症例は低発現症例に比べ好中球関連シグナルの活性化および好中球浸潤が増加していることが示唆され、LY6Dが腫瘍微小環境の免疫細胞プロファイルにも影響を与えている可能性を見出した。さらに、LY6Dの生体における機能や役割を詳細に研究するために、Ly6d遺伝子をコンディショナルにノックアウトできる遺伝子改変マウスを作製した。
LY6Dの発現と術後再発予後との相関を見出した。また、そのメカニズムとして、癌幹細胞の制御以外に、腫瘍の転移や再発に重要な役割を担っていることが近年明らかとなっている腫瘍関連好中球Tumor-associated neutrophil(TAN)の浸潤や活性化にLY6Dが関わっている可能性が示唆された。さらに、LY6Dのコンディショナルノックアウトマウスの作製はこれまでに報告がなく、この遺伝子改変マウスの開発により生体でのLY6Dの詳細な機能評価が可能となった。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
JNCI: Journal of the National Cancer Institute
巻: 114 号: 1 ページ: 97-108
10.1093/jnci/djab128