研究課題
若手研究
急性肝不全は種々の原因に反応して、過剰な炎症と免疫異常、および肝虚血壊死を伴う肝機能不全である。救急・集中治療領域においても急性肝不全の重症化を阻止するために、多臓器不全管理の適正化と、肝機能再生における創薬科学的研究は重要な課題の一つである。本研究は、種々の動物急性肝不全モデルの肝臓でどのような炎症性分子や転写因子がどのような時系列で活性化されるのかを明らかにし、その病態生理学的解釈を分子生化学・分子薬理学および病態解剖学的観点より解明することにより、遺伝子治療を含めた創薬科学的発展、そして急性肝不全治療としての臨床研究へのトランスレーショナルリサーチを目的とする。
2023年度は、免疫性急性肝炎モデルとして盲腸結紮穿孔 + Propionibacterium acnesモデル、Propionibacterium acnes死菌+LPS投与モデルの作成を試みたが、いずれもモデルが安定せず、肝障害・肝壊死・致死率の強弱がばらつき、頻回のモデル検証を行う事となった。安定した敗血症性急性肝損傷・肝不全モデルの作成のため、新たなモデルとして生菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌)の静注モデルの検証を行った。培養生菌の定量混濁溶液とPCRに因る菌の定量検証方法の確立、新規モデル作成に対するプロトコル作成を中心に進めた。生菌静注モデルはまだ、安定した用量設定が確立できず、翌年への持ち越す計画となった。一方、2022~2023年度に行ったトランスクリプトーム解析にて、ConcanavalinAモデル、CCL4モデル、アセトアミノフェンモデルでの複数のモデルでの解析を統合し、細胞死シグナルが発現し始めるタイミングでのデータを元に、発遺伝子を比較し、肝障害早期に共通して発現変動する遺伝子を36個見いだした。それらの因子の内、肝内発現かつ急性肝不全における免疫応答の中心的役割を担う、肝常在性マクロファージ(Kupffer 細胞)に特異的に発現する遺伝子を中心に探索し、次年度に定量PCRでの確認を行う予定としている。
3: やや遅れている
当初想定していたモデル作成が、安定せず、頻回のモデル再現検証が必要となり、それでもモデルが安定して再現できないため、同様の免疫応答を示す他の動物モデルを新規に作成、検証することとなった為、計画の進捗に遅れを生じた。
2024年度は敗血症性急性肝損傷・肝不全モデルにおける、生菌静注モデルを引き続き検証を行うとともに、過去に作成した3モデルでの遺伝子解析を元に、引き続き病態制御因子の同定・検証を行っていく予定である。
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Nutrients
巻: 15 号: 6 ページ: 1473-1473
10.3390/nu15061473
Scientific Reports
巻: 13 号: 1 ページ: 6851-6851
10.1038/s41598-023-33977-4
巻: 11 号: 1 ページ: 18778-18778
10.1038/s41598-021-98254-8