研究課題
若手研究
急性肝不全は種々の原因に反応して、過剰な炎症と免疫異常、および肝虚血壊死を伴う肝機能不全である。救急・集中治療領域においても急性肝不全の重症化を阻止するために、多臓器不全管理の適正化と、肝機能再生における創薬科学的研究は重要な課題の一つである。本研究は、種々の動物急性肝不全モデルの肝臓でどのような炎症性分子や転写因子がどのような時系列で活性化されるのかを明らかにし、その病態生理学的解釈を分子生化学・分子薬理学および病態解剖学的観点より解明することにより、遺伝子治療を含めた創薬科学的発展、そして急性肝不全治療としての臨床研究へのトランスレーショナルリサーチを目的とする。
2022年度はアセトアミノフェンモデル、四塩化炭素モデルにおける、トランスクリプトーム解析を行い、変動遺伝子群の同定およびパスウェイ解析を行った。前年度の検討において、ConAモデルでは投与後6時間後より肝逸脱酵素であるAST及びALTの上昇を認め、概ね12時間後~24時間後をピークに肝逸脱酵素の軽減を認めた。CCl4モデルおよび、アセトアミノフェンでは12時間後より緩やかにAST・ALTの上昇をみとめ36時間~48時間後がピークであったため、肝不全の進行過程の転写因子の動向を確認するために、6時間・12時間に2ポイントでの組織を採取しトランスクリプトーム解析を行った。トランスクリプトーム解析にあたり、おけるライブラリ調整時におけるRNAの断片化が安定化せず、従ってライブラリ長の安定化が思うように進まず、ライブラリ調整の安定化に難渋したが、最終的にプロトコル調整も確立することができた。トランスクリプトーム解析では、モデル群において発現増加した遺伝子は150個近く認め、発現低下した遺伝子が80個ほど認めた。マクロファージ関連遺伝子に着目して発現遺伝子解析を行い、Jun、Hspd1、Sphk1などの遺伝子発現が増加を認め、Sucnr1、Ldlr遺伝子の発現低下を認めた。今後さらに複数のモデルでの発現遺伝子において共通変動遺伝子を同定し、より関連の強い遺伝子について同定を行い、次年度の研究へつなげていく土台となった。
3: やや遅れている
昨年度作成し確立しているモデルを再現性を確認しつつ、RNAの網羅的解析に進んだため、モデル再現自体は概ね順調に推移した。しかし、トランスクリプトーム解析時のライブラリ作成・調整に難渋し、やや遅れを生じた。したがって、当初、2022年度にチオアセトアミドモデル肝障害モデルを確立する予定であったが、計画に遅れが生じた。
2023年度はチオアセトアミドモデル、免疫性急性肝炎モデルとして盲腸結紮穿孔+Propionibacterium acnes、モデルで2022年度と同様のモデル作成・解析を進め、共通して発言する転写因子・遺伝子を同定し、定量的 RT-PCR 解析およびその関連タンパク質の肝臓内分布の免疫組織染色を行う予定である。
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Nutrients
巻: 15 号: 6 ページ: 1473-1473
10.3390/nu15061473
Scientific Reports
巻: 13 号: 1
10.1038/s41598-023-33977-4
巻: 11 号: 1 ページ: 18778-18778
10.1038/s41598-021-98254-8