研究課題/領域番号 |
21K17547
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
征矢 茉莉子 九州大学, 医学研究院, 助教 (80830562)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経血管ユニット / ペリサイト / PDGFRβ / 慢性予測不能軽度ストレス / 成体海馬神経新生 / 輪回し運動 / 運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で我々は、神経血管ユニットのリモデリングが運動による成体海馬神経新生の促進に関わるとの独自の仮説に基づき、ペリサイトに着目した集学的研究を展開する。実験には、ペリサイトの機能が低下した血小板由来成長因子受容体β (PDGFR-β) のヘテロノックアウトマウス (Pdgfrb+/-) を導入し、アデノ随伴ウィルス (AAV) による海馬のPDGFR-βのノックダウン実験と、機能回復実験を組み合わせる。本研究の目的は、「運動によって神経血管ユニットのリモデリングが起こり、ペリサイトのPDGFシグナリングを介し、成体海馬神経新生が促進されるメカニズム」を捉えることである。
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研究実績の概要 |
哺乳類の海馬歯状回において、生涯を通じてニューロンが産生され続ける現象は成体海馬神経新生と呼ばれている。多くの先行研究によって、成体海馬神経新生は認知・情動機能の制御基盤の一つであり、様々な要因によって抑制もしくは促進されることが示されている。運動は神経新生を促進することが示唆されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。近年、運動によって神経血管ユニット(神経細胞、血管内皮細胞、ペリサイト等からなる血管の基本単位)の遺伝子発現のリモデリングが起こることや、神経血管ユニットを構成するペリサイトに発現するPDGFR-βを介したシグナル伝達が成体海馬神経新生に関与するとの報告があり、運動が成体海馬神経新生を高める作用機序として、我々はペリサイトに着目した研究に取り組んでいる。 昨年までの結果を踏まえ、ストレス負荷時のPdgfrb+/- マウスにおけるペリサイト機能異常の影響を調べるために、慢性予測不能軽度ストレスの確立を継続して行った。慢性予測不能軽度ストレスモデルは、ストレス刺激がそれほど強くないものの組み合わせとなっているので、実験に使用する動物種や系統の違いや、ストレスパラダイムによってバラツキが多くなることが問題点としてあり、実際に先行研究通りのプロトコルを実施しても再現することが難しい状況にある。したがって各々の実験環境で効果の得られるストレスパラダイムを確立する必要があり、予想以上に難航しており、現在もモデル確立のための実験を継続して行なっている。これと同時に、2週間の拘束ストレスによる影響と、高齢マウスでの機能的・構造的変化を検討するための繁殖を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pdgfrb+/- マウスに対する慢性的なストレスの影響を検討するため、慢性予測不能軽度ストレス (Chronic unpredictable mild stress (CUMS) ) モデルの確立とその効果検証を行なった。このモデルはうつ病モデルの一つとして近年注目されており、マウスが複数種のストレスに慢性的かつランダムに晒されることで抑うつ症状を発症させるモデルである。先行研究に基づき、Pdgfrb+/- マウスに対するCUMSの効果を検討したが、CUMSによるストレスの効果が見られず、ストレスモデルの再検討の必要性が出た。その後、ストレス負荷期間の延長や、一日当たりに負荷するストレス種の追加、ストレスモデルとして確立されている社会的敗北ストレスを単発的に追加するなど、様々な条件検討を行なったがモデルの確立には至っていない。この理由として、ストレスに対する動物種の違い(ラットやマウス)やマウスの系統の違いは大きく影響していると考えられるが、それ以外に多くの先行研究ではストレスの一つに電気刺激(foot shock)を用いていることが大きな違いの一つとして考えられる。本研究ではマウスの行動実験で恐怖条件付け試験を組み込んでおり、事前のストレス負荷時に電気ショックを用いることが妥当でないため採用することができない。現在、多くの先行研究で取り入れられている個別飼育を単発的にストレス刺激として負荷するモデルで再検討を行なっている。 また、これと同時に、慢性的なストレスの効果を確実に見るため2週間の拘束ストレスの効果を検討しており、行動解析と免疫組織化学染色のためのサンプル数追加のための実験を行なっている。高齢マウスの実験は繁殖の都合上特に時間がかかり、実験に必要なマウスの数を揃えることが難しいが、対象年齢になった時点でサンプリングし、脳内の構造変化を検討するため繁殖中である。
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今後の研究の推進方策 |
CUMSおよび拘束ストレスによる効果を検討し、その後運動実験へと発展させる。また、ペリサイト機能障害は加齢の影響も受けることから、高齢 Pdgfrb+/- マウスにおける成体海馬神経新生や神経血管ユニットの免疫組織科学的検討を行う。
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