研究実績の概要 |
日常生活の荷物運びや集団スポーツのパス等において,2人以上の人間が巧みに動作を相互作用させることで,1人ではできないことを2人で実現していると考えられる.私の先行研究では,2人の参加者が同時に人差し指で力発揮し,その総和を二つの目標値に分離的あるいは周期的一致させる個人間課題と1人の参加者が力検出器に人差し指で力発揮し,目標値に一致させる個人課題を比較した.その結果,個人間課題は個人課題よりも力の誤差が小さく,2人は1人よりも高いパフォーマンスであった(Masumoto and Inui,2013).実験Ⅰでは,先行研究と同様の課題と2人の参加者が力発揮し,その総和を目標値に対して持続的に一致させる課題を比較し,力のタイミングの有無によって2人が1人よりも高いパフォーマンスとなる効果(2HB1効果)が生じるかどうかを検討した. その結果,持続的力保持では,個人課題と個人間課題の力の誤差に有意な主効果が認められなかったが,分離的力発揮と周期的力発揮では,個人間課題が個人課題よりも低い力の誤差であり,2人は1人よりも高いパフォーマンスとなった.分離的力発揮(Masumoto and Inui,2014)と周期的力発揮(Masumoto and Inui, 2015)を用いた先行研究では,2人は1人よりも正確な力制御であったが,持続的力保持を用いたBosga and Meulenbroekの研究(2008)では1人は2人よりも正確な力制御であった.新知見として,本研究は2人の力のタイミング制御を必要としない持続的力保持では2HB1効果は生じないが,2人の力のタイミング制御を必要とする分離的および周期的力発揮では2HB1効果が生じることを示した. 研究結果はSpringer Nature社の発行する国際学術雑誌「Experimental Brain Research」に掲載された.
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