研究課題/領域番号 |
21K18207
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 精一 東北大学, 理学研究科, 教授 (40281969)
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研究分担者 |
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | ウイルス粒子 / エンベロープ / RNA / 蛍光プローブ / 検出 / 分子プローブ |
研究開始時の研究の概要 |
2019年末からの新型コロナウイルスの世界的大流行に伴い、私たちの日常は一変した。私たちが感じる脅威は、「ウイルスが目には見えないこと」である。本研究では、ウイルス粒子表面のエンベロープ構造及び内包されているゲノムRNAを標的とする蛍光性分子プローブをそれぞれ設計・合成し、両者の併用に基づく全く新しいウイルス粒子検出・可視化技術を開発する。2種類の蛍光性分子プローブを併用することで、環境中ウイルス粒子(エンベローブ構造&内包RNA)の存在をダブル検出できる簡易技術を開発、医療現場やウイルス研究で用いられる様々な材料に付着したウイルス検出へと適用することで方法論としての基礎と有用性を実証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ウイルス粒子表面のエンベロープ構造及び内包されているゲノムRNAを標的とする蛍光性分子プローブ(検出試薬)をそれぞれ設計・合成し、両者の併用に基づく全く新しいウイルス粒子検出・可視化技術を開発する。具体的には、(i)ウイルス粒子表面の高曲率脂質二重膜(エンベロープ:直径約100 nm)に高選択的に結合・蛍光応答を示す両親媒性α-helixペプチドプローブ、及び(ii)ウイルス粒子のエンベロープ構造を迅速に透過・内部に拡散し、ゲノムRNAに特異的に結合・蛍光応答を示すRNA染色蛍光色素を開発する。2種類の蛍光性分子プローブを併用することで、環境中ウイルス粒子(エンベローブ構造&内包RNA)の存在をダブル検出(2重染色)できる簡易技術を開発、医療現場やウイルス研究で用いられる様々な材料に付着したウイルス検出へと適用することで方法論としての基礎と有用性を実証する。 令和4年度の研究実績の概要は下記のようになる。 (a) 昨年度に引き続き、世界トップレベルの高輝度モノメチンシアニン色素の開発を達成した(ACS Omega, 2022)。新規に開発したRNA染色蛍光色素は、off-on型の優れたlight-up応答機能と膜透過性を併せ持ち、生細胞中のRNA(核小体)を明瞭にイメージングすることができる。また、核酸染色色素として汎用されているチアゾールオレンジが、生細胞RNA染色蛍光色素として機能することを見出した(Analyst, 2023)。 (b) インフルエンザMタンパク質由来の両親媒性α-helixペプチドプローブが、ヒト風邪コロナウイルス(HCoV-229E)検出に適用できることを見出した(日本分析化学会第71年会等にて発表)。HCoV-229Eに対する検出感度は、Western blot法と比べて1桁高く、さらにA型インフルエンザウイルス検出にも適用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、両親媒性α-helixペプチドプローブを活用することで、ウイルス粒子のエンベローブ構造を検出できること、また、優れたlight-up応答機能と膜透過性を併せ持つRNA染色蛍光色素の開発に成功している。今後、ウイルス粒子(内包RNA&エンベローブ構造)検出プローブとしての機能をより詳細に評価するとともに、これらの検出プローブの機能改良をさらに進めることで、その有用性を実証、実用に供しうる新しいウイルス粒子検出・可視化技術の実現が期待できる。 以上のように、本研究は順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の研究計画に従って、以下のように研究を進める。 (a) ウイルスエンベローブ構造検出試薬:本研究では、ウイルスエンベロープ構造(高曲率脂質二重膜:直径約100 nm)を両親媒性α-helixペプチド蛍光試薬により高選択的に検出することに着目し、実際にこれが可能であることを見出している。現時点において、Western blot法と比べて1桁高い検出感度を達成しており(ヒト風邪コロナウイルスに対して)、今後、ペプチド配列・蛍光色素を最適化することで、検出感度の更なる改良を進める。 (b) エンベロープ(脂質二重膜)透過性RNA検出試薬:研究開始時点で開発済みの深赤色蛍光RNA染色色素に加えて(Anal. Chem., 2019, 91, 14254; RSC Adv., 2021, 11, 35436)、新たに高輝度RNA染色蛍光色素を開発し(特許第7029841号; ACS Omega, 2022, 7, 23744)、さらに、汎用核酸染色色素チアゾールオレンジが生細胞RNA染色蛍光色素として機能することを見出している(Analyst, 2023, 148, 636)。今後、ウイルス粒子内包RNA検出試薬としての機能を評価するとともに、必要に応じてそれら色素の機能改良を進める。
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