研究課題/領域番号 |
21K18359
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
志波 彩子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80570423)
|
研究分担者 |
矢島 正浩 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00230201)
宮地 朝子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10335086)
井本 亮 福島大学, 経済経営学類, 教授 (20361280)
前田 直子 学習院大学, 文学部, 教授 (30251490)
勝川 裕子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40377768)
大島 義和 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40466644)
永澤 済 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (50613882)
田村 加代子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80233120)
齋藤 文俊 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90205675)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | テキストタイプ / 構文 / ジャンル / 文体 / レジスター / テキスト / 構造と要素の相互作用 / 要素 / 相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
コーパスから収集したデータをもとに,収集した例文を構文タイプごとに分類し,前後にどのような構文が現れるか,またジャンルごとにどのような特徴的な構文間の結びつきがあるのかを考察する。こうした構文間の関係は必ずしも隣接する前後関係とは限らず,テキスト内の離れた位置に存在する構文同士が連関し合っている,ということも考えられる。また,歴史的観点からは,特に書き言葉ジャンルにおける構文とテキストとの関係を見ていく。これまで分析が手薄であった古代や中世,近世,近代における変体漢文や漢文訓読体を含めた書き言葉テキストと構文との関係を探っていく。
|
研究実績の概要 |
本年度も昨年度同様2回の研究会を開催し,進捗状況を報告した。 10月に行った第3回研究会では,大島デイヴィッド義和が「謙譲語II」と「丁重語」の使用に関わる要因―語用論・文体論的考察―」を発表し,謙譲語と丁寧語の関係を文体的観点から考察した。次に田村加代子が「否定詞の作用―『論衡』「逢遭篇」を例に」を発表し,古典中国語の異なるジャンルの中で,否定構文がどのように効果的にジャンルの特性に関わっているかを論じた。テキストの構成に明確なパターンがあり,ジャンルと構文の関係が分かりやすく議論されていた。続いて,齋藤文俊が既刊論文の紹介として「〈論文紹介〉明治後期における翻訳聖書の文体」を発表した。翻訳聖書の文体にどのような構文タイプが見られるのかを示し,当該の文体が生まれる背景について議論した。 3月に行った第4回研究会では,まず志波彩子が「古代日本語のラレ構文とジャンルー『源氏物語』と『今昔物語集』を例に―」を発表し,ラレ構文の受身,可能,自発,尊敬などの下位構文タイプが,王朝物語の源氏と説話集である今昔という異なるジャンルでどのように用いられているかを,各構文の割合や動詞の割合などを示しながら議論した。次に前田直子が「希望表現「~たい」の使用実態」を発表し,留学生の作文に見られる「~たいです。」の使用について,なぜこれが不自然なのかを,母語話者の使用と比較しながら考察し,議論した。最後に勝川裕子が「中国語の物語構築にける注視点の移動と構文選択」を発表し,日本人中国語学習者と中国語母語話者が,同じ4コマ漫画のストーリーを構築するのにどのような構文を用いるのかを比較しながら検討し,そうした構文選択が起きる背景を考察した。 志波は,学会誌『日本語文法』に,ジャンルと構文との相互関係について述べた論文を投稿中である。 以上
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はテキスト・ジャンルが構文で構成され,ジャンルの中には特有のテキストのパターンがあるという発想のもと,研究を進めている。このような発想でテキストや構文を研究した研究は,これまでにほとんどないため,方法論などは手探りの状態である。さらに,テキストの構造というのは,文の構造に比べて何倍も複雑であり,そのパターンを捉えることは容易ではない。一方で,テキストを構成する構文のパターンが少しずつ明らかになりつつある。 それぞれの構成員が研究する構文の1つ1つが実はジャンルの中のテキストと深い関係を持っていることも明らかになりつつある。 研究会はオンラインと対面のハイフレックス式で行っており,毎回の研究会はほぼ全員が参加し,活発に議論が交わされている。 また,日本語文法学会の第23回年次大会において,宮地と志波がシンポジウム「ジャンルと文法;文法を揺るがす・形づくる・とどめる」を企画し,3人の講師を招いてジャンルと文法の関係を議論し,大きな反響を得た。 以上
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるため,何かしらの成果を発表したいと思っている。 昨年の日本語文法学会で企画したシンポジウムに登壇いただいた大江元貴氏を招いて,6月に特別研究会を開催する予定である。その後,志波は8月にベルギーで行われるヨーロッパ日本学研究学会の大会で,古代日本語のジャンルと構文の関係について発表する予定である。 また,9月と3月にも研究会を開催し,構成員らの研究成果をまとめることができればと考えている。具体的には,それぞれが扱っているテキストの特徴を,以下の項目を参考に特徴づけ,こうした特徴と構文との関係について何か統一的な議論ができればと考えている。 ◆ジャンルの指標◆ 1.媒体:文字(書籍,新聞,SNS,広告など),音声 2.目的・役割 3.内容 a. 日常(私的),公的 b. 主張,説得,評価など(「こうあるべき」という議論か否かなど) c. 体験,知識 4.聞き手の特徴:一般,専門家,子供など 5.話し手の特徴:権威者,専門家,一般など 6.方向性:一方向,双方向 7.話し手の顔を見せたいか否か(主観,客観) 8.求められる文体(簡易さ,親しみやすさ,威厳など)
|